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世界標準の子育てPhoto: Adobe Stock

小学校選びは、将来の目標を考慮に入れて

 小学校は子どもが6年間過ごす場所です。小学校での経験が子どもの学力発達、対人関係、考える力、中学受験などにも大きく関わってきます。

 小学校の選択肢がある場合は、「将来の目標」を考慮に入れて選ぶことがポイントです。

 たとえば中学受験を視野に入れているのであれば、中学受験があたりまえという環境に入れることで、子どもはごく自然に中学受験を考えるようになります。

 反対に中学受験を考えていないのに中学受験があたりまえという環境に入れると、子どもが劣等感覚を持つ可能性があります。

「子どもに国際感覚を身につけさせること」を目指す家庭であれば、英語教育に熱心な学校や国際バカロレア認定校などを選択するのがよいでしょう。

 国際交流の機会が多く、クラスメートにも英語が話せる子ども、海外経験のある子が多いでしょうから、子どもにとっても大いに刺激になるはずです。

 ただし、子どもの強み、性格を前提にして選ばないと、子どもに失敗体験を植え付けることになります。

 最新のSTEM教育を学ばせたいという場合でも、ICT環境を普及させるためのモデル校も増えてきています。

 ロボティックスやコンピュータープログラミングの方向に子どもを導きたいという方針であれば、理数系に力を入れている小学校を選ぶとよいでしょう。

 小学校を決める前(できれば入学の1年前まで)にパートナーと話し合い「家庭の教育方針」を決めましょう。

 勉強面、習い事面(スポーツ系とアート系)、中学受験について、夫婦で方針を共有し、方針にマッチした学校を探していきます。

 また、公立、私立、国立、どの小学校を選ぶかによってかかる費用がずいぶんと変わってきます。

 小学校は子どもの性格や特性に合っていることが一番ですが、家庭の経済的なゆとりも考慮した上で選ぶことがポイントです。

 小学校は父兄の関わりも大きいですから、両親も子どもも居心地がよい環境を選ぶことが大切です。

私立学校は教育理念への共感がポイント

 子どもに私立学校を選択する場合、受験して合格するかどうかは別に、いくつかのポイントがあります。

 第一に経済面の長期計画を立てること。私立小学校に進学する子どもの多くは、中学、高校、大学も私立学校に進学するケースが多いです。

 12年間(大学も私立だと16年間)私立学校に通わせられる経済的な見通しがあることが大前提です。

 また学費の他にも、習い事の費用も想定しておく必要があります。私立学校には音楽やスポーツなどの課外活動に本気で打ち込んでいる生徒が多くいます。

 子どもが「強み作り」において引け目やコンプレックスを感じることがないように、課外活動費についても計画を立てておく必要があります。

 第二に「学校名」に踊らされないこと。それぞれの私立学校は独自の教育理念や建学の精神があります。

 それを無視して名前だけで学校を選ぶとミスマッチが起こりやすくなります。

 たとえば慶應義塾の建学の精神は『福沢諭吉の教育理念である「独立自尊」の教えを重視する。また「独立」とともに「関係性」を、「自尊」に加えて「他人への思いやり」を大事にする子どもを育てる』です。

 雙葉学園の建学精神は『「徳においては純真に 義務においては堅実に」を校訓とし、カトリックの精神に基づき、全人教育を目指す。幼稚園より高等学校まで上級進学の資格を与え、一貫教育を行う』です。

 私立学校は、このような建学の精神をサポートする人たち(学校の先生や父兄や卒業生)によって伝統が脈々と受け継がれています。

 ですから学校の教育理念に両親が賛同できることがポイントなのです。

 学校の精神や理念を考慮せずに名前だけで選ぶと、子どもが学校の雰囲気に馴染めなかったり、親も父兄の雰囲気や先生の考え方に共感できず、結果として子どもに居心地の悪さを経験させることになります。

公立小学校を選択する場合は、エリアや生徒と先生の比率を考慮

 子どもに公立小学校を選択する場合は「学区」が重要なポイントです。

 学区内の小学校の評判が悪い、あるいは家庭の教育方針と学校環境との差が大きいという場合は、妥協せずに越境入学や引っ越しというオプションも検討してください。

 公立小学校は、私立小学校のように教育方針や価値観に賛同する人たちの集まりではありません。そのエリアに住む子どもたちが、地域内にある小学校に通ってきているのです。つまり、地域の特徴=学校の特徴になりやすいということです。

 新興住宅地であればサラリーマン家庭の子どもが多いでしょう。歴史ある城下町や下町なら商売を営んでいる家庭が多いかもしれません。

 工業地域であれば職人さんや製造業に従事する家庭が多いでしょう。富裕層向けの閑静な住宅地であれば所得の高い人でなければ住めません。

 また住宅地でも文教都市と呼ばれるエリアは教育熱心な家庭が多いという特徴があります。

 学区の次には先生と生徒の比率に目を向けるとよいでしょう。

 一人の先生が35人を教える学校もあれば、20人の学校もあります。もちろん生徒が少ないほうがよく目が行き届きますから、きめ細かい指導が期待できます。

 また1学年に5クラスある学校もあれば、1学年に1クラスしかない学校もあります。学年が低いうちは小規模の学校のほうが子どもにとって安心感が大きいですが、6年間ずっと同じ仲間というのは、中高学年になると少々物足りないと感じるかもしれません。

 もし近所の小学校が1学年1クラスの場合は、習い事を通して学校のクラスメートとは違う仲間と出会うチャンスを作ってあげることをおすすめします。

国立小学校は特性を理解した上で

 国立小学校は、国立大学の教育系学部における教育研究を目的としています。まずはこの点を理解した上で、子どもを受験させるか検討する必要があります。

 また、国立小学校の受験はペーパー試験、くじびき、面接など学校により方式は様々。能力があれば必ずしも合格できるわけではないので注意が必要です。

 国立小学校は教育研究を目的としていますから、STEM分野や考える力など最新の教育を受けられるチャンスがあります。

 その反面、学生の教育研修にも活用されますから、クラスに見学者がいたり、研修生がいることも多くあります。

 教育研究の場に我が子を置くことがプラスであるのか、マイナスであるのか、慎重に考えて判断してください。

 また国立小学校は保護者の関与が極めて重視されます。親が学校の教育方針に賛同し、積極的に学校行事に関与することが大前提です。

 遠足、文化祭、運動会、季節ごとの行事は保護者の協力が求められ、学校に丸投げすることはできませんので、親に時間的なゆとりがあることも大切です。

 国立小学校は非常に人気が高く、親に熱が入りすぎると子ども不在の押しつけ教育に陥りがちなので注意してください。

 子どもの成長を長い目で捉え、目先の受験に踊らされないよう、子どもの強みを伸ばしてくれる「最高の環境は何か?」を忘れないことです。

(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)