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安東泰志の真・金融立国論

黒田日銀が単なる「デフレ脱却」でなく
「良い物価上昇」を実現する道

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第31回】 2013年3月15日
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 いよいよ、黒田新総裁が日銀の舵取りを担うことになる。大胆な金融政策への期待から株価は大きく上昇し、一方で、普通は株価が上昇するときには上昇するはずの長期金利も、日銀がより長期の国債を買い入れ始めるという期待によって逆に下落するという、安倍政権にとっては願ってもない状況が続いている。

 確かに、インフレ期待から為替が円安に動き、株高効果で高額商品や不動産の取引が活発化している。その一方で、円安によって輸入物価が高騰し、不動産など資産価格が上昇する気配がある。つまり、物価はそういう経路で上昇に転じる可能性がある。しかし、果たしてそれは安倍政権が目指すべき本来的な「デフレ脱却」と言えるものなのか。

インフレは必ず実現できる

 既に安倍政権の圧力に屈したかのような形で、白川日銀時代に2%というインフレ目標を導入済みであるが、単にインフレ率が高まればそれでいいのだろうか。実は、賢明な読者諸氏はとっくにご理解の通り、政府がその気になればインフレは簡単に起こすことができる。ここで重要なのは、日銀ではなく、政府がその気になれば、というところだ。2、3の例を挙げてみよう。

 たとえば、政府にその覚悟があれば、外国為替市場で無制限に円を売ることが可能である。なぜならば、円という通貨は、それこそ日銀がお札を刷ればいくらでも発行できるのだから、日本政府は、円を売ることに関しては無制限に可能なのだ。そうすれば、円はどこまでも下落し、輸入物価の高騰を通して簡単にインフレが実現する。

 ただし、これは言うまでもなく海外諸国との軋轢を覚悟しなければならないので外交戦略の問題である。また、逆に円安を止めようという時になったら、今度は外貨を売って円を買わねばならない。日本政府が売れる外貨の量は外貨準備に限定されるので、無制限というわけにはいかない。つまり、円安に歯止めが効かなくなる恐れがある。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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