屋上・壁面緑化の
植栽材料、素材は多様に

 国土交通省の「平成23年全国屋上・壁面緑化施工実績調査」によれば、2011年中に少なくとも約25.2万平方メートルの屋上緑化と8.9万平方メートルの壁面緑化がなされた。両者を併せた面積はサッカーコート約46面に相当する。特に壁面緑化は前年から2割以上の伸びを見せ、単年度での過去最高面積となった。

 同調査によれば、00~11年の12年間に屋上の緑化は少なくとも330万平方メートル、壁面は同じく48万平方メートルが実施された。ここ数年で見た場合、壁面の緑化は順調に伸びているに対し、屋上緑化は緩やかな減少ペースである。屋上が太陽光発電パネルの設置に利用されるケースが増加する一方で、太陽光発電を実施しにくい壁面では緑化が進んでいることが一因のようだ。

 現在、屋上緑化ではさまざまな植栽材料や素材が用いられている。潅水が少なくてすむ芝生やセダム(メキシコマンネングサ)に加えて、コケ類や草花、低木などで、それらを複数組み合わせて使う場合が最も多い。

 また、建物の加重に負担をかけない軽くて保水力のある高分子ポリマーの保水シート、肥料を挟み込んだ再生繊維マットなど、保水と同時に屋上面への防水や防根も考慮された素材が多数開発されている。

 壁面については、つる性の植物が使用されることが圧倒的に多く、前出の調査でも7割前後という高い数値となっている。

全国453社(造園、建設、緑化資材メーカーなど)へのアンケート調査(回収217社)による。近年は、商業施設やオフィスビルのほか、教育文化施設での緑化が増えている。
※国土交通省「平成23年全国屋上・壁面緑化施工実績調査」
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緑化による具体的な効果

 屋上と壁面の緑化は、建物や周辺部に数々の効果をもたらす。

 遮熱、断熱による夏場の冷却効果、冬場の保温効果が最大だが、他にも保水力の向上や防音効果、さらには日光の直射が減ることから屋上面や壁面素材の寿命を伸ばす効果もある。

 これらの効果は太陽光パネルの設置でも得ることができるが、緑化には太陽光パネルにはない付加価値がある。それは、「緑のちから」だ。建物や周辺の景観を美しく変え、生態系を守る働きも担うことができる。また、人口密度の高い都会で働く人々の心を癒す、ヒーリング効果にも期待が寄せられる。

 さらに、緑化部分をオープンな散策スペースにアレンジしたり、野菜や草花を育てる畑として、建物利用者や近隣住民などに開放したりする例も増えている。緑化スペースが、地域コミュニティの形成や維持に一役買うというケースだ。

 設計や維持の方法にもよるが、屋上や壁面の緑化は、比較的安価な投資で大きな効果を得ることができる。猛暑や厳冬、ゲリラ豪雨などの自然災害が多発する現在、緑化に一層の注目が集まっていくことだろう。