みなさんは、世の中のちょっとした変化に敏感でしょうか。
数字に強い人は、ちょっとした変化に「違和感」を感じ、自分で仮説をたてて、その理由を数字で考えていきます。
経営コンサルタントとしてこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施してきた平野薫氏は、①世の中の事象に違和感を持つ→②違和感にフォーカスする→③自分なりに仮説を立てる→④数字で根拠を分析し検証する→⑤人に話したりブログに書いてアウトプットする、という一連のルーティンを日々継続して行うことが数字に強くなるコツだと言います。まずは、「違和感」を放置せずフォーカスすることが大切なのです。
本連載では、「世の中のふとした疑問を数字で考えるエピソード」が満載の話題の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』から一部抜粋し、数字に強くなるエッセンスをお届けします。

なぜセブンカフェのラージサイズはホットよりもアイスの方が高いのか?Photo: 石郷友仁

レギュラーはホットもアイスも同じ価格なのにラージはアイスの方が30円高い

 セブンカフェは2013年に発売を開始して以来、香り高いレギュラーコーヒーが缶コーヒーよりコスパが良いことが話題になり、多い年には年間10億杯を超えるメガヒット商品となっています。

 1杯100円としても1000億円の売上になり、単品商品としては驚異的な数字です。また日本の人口を1.2億人として考えると日本人一人当たり年間で8.3杯も飲んでいる計算になります。
 小さな子どもや高齢者の購入頻度が低いことを考えると、コアターゲットのビジネスパーソンの購入頻度はその数倍になると思われます。発売から10年でいかに生活に浸透しているか分かります。

 セブンカフェ発売当初、4種類の商品がラインナップされ、下記のような価格で販売されていました。

●セブンカフェの価格
ホット
レギュラー 100円(現在110円)
ラージ 150円(現在180円)


アイス
レギュラー 100円(現在110円)
ラージ 180円(現在210円)

 これを見て、まず感じたのはなぜラージサイズはホットよりもアイスの方が高いのだろう? ということです。マクドナルドでもドトールコーヒーでもサイズが同じであれば価格は一緒です。同じサイズ=同じ価格という固定観念があったからこそ、この価格差に強く反応しました。

実はアイスの方が原価が高い

 違和感を抱きながら、セブンカフェの購入手順を一通り確認したところで価格差の理由が理解できました。価格差の理由はアイスコーヒーのカップの形態にあります。ホットの場合は普通の紙コップなので重ねてバックヤードに入れておけばいいのですが、アイスは氷がカップに入った状態で冷凍ケースに保管されているため、冷凍庫での保管費用や冷凍物流の費用も掛かります。その分コストが高くなるので価格も割高になっているわけです。

 では、なぜレギュラーは同じ価格なのか? それはホットもアイスも100円というインパクトのある価格を訴求するために政策的に価格を合わせたのでしょう。前述のようにセブンカフェは年間10億杯以上を売り上げるメガヒット商品となり、コーヒー目当てで来店するお客さんも多く、結果的に他のついで買いも増えているはずです。
 ついで買いで他の商品の販売が増えればレギュラーのアイスコーヒーがあまり儲からなくても問題ないという考えでしょう。

ローソンはラージでも同じ価格の理由

 ちなみに競合のローソンは発売当初各サイズ、ホットもアイスも同じ価格でした(現在はMサイズのみホットとアイスの価格差がありますが、Sサイズ、メガサイズは同じ価格です)。

 これはなぜかというと、ローソンのアイスコーヒーは、オーダーを受けてから店員がカップに氷を入れるシステムだからです。これなら冷凍保管の費用も冷凍物流の費用も発生しません

 なぜセブンイレブンとローソンで異なる方式なのか、その理由は一日当たりの売上(平均日販)の差にあると考えられます。セブンイレブンの平均日販は約65万円、ローソンは約50万円です。客単価はそれほど変わらないと仮定すると、セブンイレブンの方がローソンより客数が3割多いことになります。客数が多ければ、レジ業務は忙しく、レジ待ちが発生する頻度も高くなります。

 そこで、レジのオペレーションの負担を減らして回転を上げるために、セブンイレブンはコストが上がっても現在の方式を採用していると考えられるのです。

 コストのことを考えるとローソンのシステムにメリットがありますが、昨今の人手不足とオペレーション工数の削減、レジの無人化を考えるとローソンのシステムが今後継続されるかどうかは疑問が残るところですね。

なぜセブンカフェのラージサイズはホットよりもアイスの方が高いのか?イラスト/春仲萌絵

(本原稿は、平野薫著なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?を抜粋、編集したものです)