「こんなに利益が出たのに、手元に残るお金はわずか」
経営者なら、誰しも一度はこう思うはずです。だからといって、小手先の節税に躍起になってはいけません。会社のお金を1円でも多く残し、そのお金を会社の投資にまわし、会社をより成長させる。それこそが経営者の仕事です。
本連載は、「1円でも多く会社と社長個人にお金を残す方法」を学ぶものです。著者は、財務コンサルタントの長谷川桂介氏と公認会計士・税理士の黒瀧泰介氏です。インボイス制度、各種法律に完全対応の『今日もガッチリ資産防衛――1円でも多く「会社と社長個人」にお金を残す方法』の著者でもあります。経営者の超リアルなお金の悩みに対し、あますところなく解決策を提示した1冊になっています。

税務署が狙う「超意外な経費ミス」とは?Photo: Adobe Stock

税務署は何を見ているのか?

 節税対策をしていると、怖いのが税務調査ですね。税務調査の調査先は、何らかの指標をもとにあたりをつけ、決算内容に問題がありそうな会社を狙い撃ちしているようです。

 税務署としても、「ランダムに選んで調査に入った結果、不自然な点は何ひとつなかった」というのは避けたいのでしょう。

 そこで本日は「税務調査で指摘されやすいポイント」についてお話しします。

仕入れや経費の期ズレ

 売上の期ズレと同様、仕入れについても入念なチェックが入ります。「期ズレを意図的に起こすことによって税額を減らす」という不正が起こりやすくなるためです。

 たとえば、外注先に前金で支払った金額を「前期の決算」で経費にすると、「これは、売上に対応した年度の経費にするものです」と指摘を受けたりします。

 たとえ悪意がなくとも、こうした期ズレは確実にチェックされます。経営者も会計のプロではないので、「支払ったのになんで経費にできないんだ!」と思う方も少なくありません。

 たとえば、何かしらの工事を受注したとして、完成品の引き渡しは来期になる場合、その工事には先に材料費や外注費などが発生し、その支払い日は売上より先に到来します。税務上、売上は来期になるので、これら工事で発生した費用も来期に計上すべき、となります。

 お金を払ったタイミングで経費にできるわけではないのです。材料費や外注費など先に支払ったものは仕掛品や前払金などとして貸借対照表に計上する必要があります。

 厳密な調査官に出くわすと、工事に関わっている正社員の給与なども仕掛品計上してください、と指摘されたりします。

(本原稿は『今日もガッチリ資産防衛――1円でも多く「会社と社長個人」にお金を残す方法』から一部抜粋、追加加筆したものです)