「起業家エコシステムが東大早慶に集中」日本でスタートアップが育たない理由を有識者4人が大激論Photo:PIXTA

質、量ともに世界基準のスタートアップを日本で生み出すために何が必要なのか。何を変えていくべきなのか。昨年に引き続き、入山章栄・早稲田大学大学院経営管理研究科・早稲田大学ビジネススクール教授、加藤雅俊・関西学院大学経済学部教授・同アントレプレナーシップ研究センター長、清水和彦・フォースタートアップス取締役兼アクセラレーション本部長、牧兼充・早稲田大学ビジネススクール准教授の4氏が大学教授や研究者の観点からこの問題について議論した。その内容を2回にわたりお届けする。前編では、リスクを取る文化を育むための教育の欠如、大学のスタートアップへのかかわり方の薄さなどの課題について語ってもらった。(構成/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

起業家希望者が起業する比率は海外と同じ
日本に不足しているのは起業希望者の絶対数

清水 スタートアップ育成5カ年計画が発表されてから1年たち、日本が起業において世界基準で戦っていくにあたっての課題や海外の事例をお伺いできればと思います。

 計画では2027年度にスタートアップ10万社、ユニコーン100社、投資額10兆円が目標とされていますが、そもそも日本は起業家の数が足りない、起業家になりたい層が少ないといわれています。

加藤 高成長する企業を育てることと、起業家になり、スタートアップを設立しようという人を増やすことは分けて議論したほうがいいと考えています。

 グローバル・アントレプレナーシップ・モニターという1999年から世界各国で行われている調査があります。

入山 起業の研究で世界トップクラスの米国のハブソン大学と英国のロンドン・ビジネス・スクールが実施している調査ですね。略称がGEMです。

加藤 そのGEM 調査によると、起業家になりたい人が起業家になる比率、起業活動を始める比率において日本は米国より若干下回りますが、他の欧州諸国と比べて遜色ありません。それはこのおよそ20年間変わっていません。

 一方、起業家の知り合いがいるとか、起業のための能力を持っているといったように何らかの形で起業に関係するような層の比率が低く、逆に起業活動と全く無関係な起業無縁層が非常に高いのが日本です。この傾向は最近も変わっていません。

 こうしたことを考えると、スタートアップを成長させることは大事ですが、長期的に見ると起業家を目指す人、起業に関心を持つ人を増やすことがその後の成長までの展開を考えても重要ではないかと考えます。ここに日本の大きな課題があるのだと思います。どうやったら克服できるか、みなさんの意見を聞きたいと思います。

起業の裾野を広げ起業家を増やすには、起業を目指す人、関心を持つ人を増やす必要があります。そのために今の日本にかけているもの、必要なものは何かを次ページ以降、徹底討論していきます。