巷では「DX」「DX」の大合唱が呪文のように続いています。しかし現場からは、「仕事が増えただけで売上はなかなか上がらない」という悲鳴が聞こえてきます。そんな悲劇を解決すべく、1000社以上の問題を解決してきたITコンサルタント・今木智隆氏が書き下ろしたのが『DX沼からの脱出大作戦』(ダイヤモンド社)です。本連載では、さまざまなデジタルの「あるある」失敗事例を挙げながら、なぜそうなってしまうのか、どうしたら問題を解決できるのかをわかりやすく丁寧に解説していきます。ECサイトやSNSの運営に携わっている現場の方、デジタル広告やデジタルマーケティングに関わっている現場の方はぜひご一読ください。

データサイエンティストに丸投げするダメ上司Photo: Adobe Stock

何をしたいかわからないのに「なんとかしてくれ!」

 企業側に主体性がなく「うちにはコンピュータに疎い文系人間しかいないから、専門家の話を聞いてこい」という失敗パターンがあります。
「データを分析すれば、何か知見が得られるんじゃないか」という代わりに、「データサイエンティストに聞けば、何か知見が得られるんじゃないか」と思ってしまうわけです。

 データサイエンティストなどの専門家は最新のバズワードに通じていますから、話を聞かせてくれと言われればいくらでも喋ることはできます。やれ、データは21世紀の石油だ。やれ、ビッグデータを分析して、データドリブン型の経営を目指そう。今なら、AIですね。ChatGPTを使って、新しいビジネスモデルを生み出そうといったところでしょうか。私自身もそのような相談を持ちかけられる立場ですから、業界の最新動向や技術的な話ならいくらでもすることはできます。

「日本の企業は、シリコンバレーより10年遅れている!」と不安を煽り、「○○メソッドを取り入れることで、この企業の業績は年率20%以上の成長を続けています」と成功事例を謳うのが定番のコースです。
 専門家から最新のバズワードを仕入れた企業の担当者は、「これからはデータドリブン(ここに入る用語は何でもかまいません)ですよ!」と大慌てで会社に戻り、とりあえずツールを入れて専門家の指示通りに動いてみようとします。しかし、断言しても良いですが、こうやって専門家に丸投げしても100パーセント何も起こりません。

 バズワードで煽る専門家は多いですし、事例にしてもうまく行っているものだけをチェリーピッキングすれば簡単に集められます。「シリコンバレーで注目」と言っても、シリコンバレーには何百、何千もの会社があるわけで、そのほとんどは数年程度で倒産しているわけです。

 しかし、私は「専門家はみんな人を騙そうとしている」とか、「デジタルツールに意味がない」と言いたいのではありません。
 企業側が何をしたいのかわからないのに、「何とかしてくれ」と言われたところで、専門家としても手の打ちようがないということです。

 大事なのは、バズワードや成功事例に煽られるのではなく、自社の事業に何が必要かを企業自身が考えること。
 自分たちで仮説を立てることなく、1から10まで専門家の言う通りにしたところで、得るものはありません。

※本稿は『DX沼からの脱出大作戦』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。