日本政府の半導体メーカーへの支援の動きとしては、世界最大のファウンドリー(受託製造企業)であるTSMC(台湾積体電路製造)の熊本誘致もあります。TSMCは熊本に完成させた第1工場に続き、6nmプロセスの半導体量産を見込む第2工場を建設。日本政府はTSMC熊本工場の整備費用に対して4760億円、第2工場にも7500億円規模を補助し、世界最大のファウンドリー誘致により、もう一度ロジック半導体の製造能力を強化し、供給力を確保する狙いがあります。

 ほかにも、米国半導体メーカーとの関係強化の取り組みや、国際的なAI・半導体関連企業トップとの意見交換会に西村経済産業大臣(当時)が出席するなど、積極的な半導体産業への働きかけが目立ちます。

 このような日本政府の動きの背景には、経済安全保障面だけでなく、税収への期待もあります。これを裏付けるように2023年、半導体大手各社の株価は軒並み高騰。NVIDIAの株価は年初来245.9%上昇(約3.5倍)、AMDが130.2%、TSMCも30.9%増となりました。日本でも半導体製造装置など、関連株の株価が上がっています。NVIDIAはまた、2023年11月〜2024年1月期の決算で、売り上げ221億300万ドル(約3兆3100億円)と前年同時期の3.7倍の増収を発表。最終利益は122億8500万ドル(約1兆8400億円)と前年同時期の8.7倍の大幅な増益となっています。それらが、冒頭で述べたように日経平均株価の最高値更新に寄与したというわけです。

生成AIの普及でさらに
脚光を浴びる「ロジック半導体」

 ここで半導体とは何か、ざっくりおさらいしておきましょう。半導体の「導体」とは金属のように電気を通す物質のこと。電気を通さないゴムなどの物質は絶縁体といいます。半導体は導体と絶縁体の中間の性質を持ち、電子機器の中で重要な役割を果たします。

 半導体はトランジスタやコンデンサなど電気を制御する部品に使われ、電子機器の小型化を実現しました。複数のトランジスタや電子部品を1つの基板上に集積させたIC(集積回路)が出現してからは電子機器がさらに小型化し、性能が向上しました。ICおよびICの中でも集積度が高いLSI(大規模集積回路)は、今やパーソナルコンピューター、スマートフォンなどのデバイスやインターネット、クラウドコンピューティング、AIなどのテクノロジーになくてはならない存在です。