「自力整体」とは、整体プロの技法を自分におこなう人気メソッドです。「久しぶりにぐっすり眠れた」「10年間苦しんできた慢性痛から解放された」「脊柱管狭窄症の診断を受けたが、痛みが和らぎ手術を回避できた!」「健康的にダイエットできた」「更年期の不調が消えた」など、多くの声が寄せられています。
現在、国内・海外で約15,000名が実践。鍼灸、整体、ヨガを構成した動きで、痛み、コリ、冷え、疲労、不眠、便秘、不定愁訴を解消します。
今回、3分以内で痛みや不調を解決するワークを集めた
『すぐできる自力整体』が発売。症状別の「悩み解決ワーク」のほか、じっくりほぐして骨盤調整もできる「4つのコース(動画つき)」を収録。著者の矢上真理恵さんは、「不調のほとんどは自力整体で解消できる」と語ります。
本書より一部を抜粋・編集し、その中身を紹介しましょう。
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
(写真/榊智朗 構成/依田則子)

【整体プロが指南】こんな人は老けこみやすい? 春に気をつけたい「1つのこと」

春は「水毒症」に気をつけて

春なのに、あちこち痛いし、眠れない。寝不足で疲れがとれない、美容に悪いし老け込みが気になる……という方。次のいずれか当てはまりませんか?

・雨の降る前になると、関節痛や腰痛が現れる
・季節の変わり目に気温が下がり冷えてくると、体調不良が起きたり、あちこちが痛くなる
・夜中、何度もトイレに起きてしまう
・朝、目覚めると、関節や筋肉が痛くこわばっている。でも日中活動しているうちに治っている

1つでも当てはまる方は、「水毒症(すいどくしょう)」かもしれません。

こんな症状が現れやすい

体内の水分量が多いときに起こる不調を、東洋医学では「水毒症」と呼んでいます。行き場を失った余分な水分は冷え、血流が悪化。むくみから関節に痛みが出やすくなる症状です。

不眠、花粉症や関節炎、喘息やアレルギー性鼻炎、湿疹、アトピー、めまい、難聴、耳鳴り、視力低下、高血圧、下痢などが特徴です。

汗をかきやすい夏や、空気が乾燥している冬は、水分は皮膚から蒸発。体はすっきりと軽くなります。一方、寒暖差が激しい春は湿気も多く、水分の排泄力は低下。水毒症になりやすいのです。

50年近く鍼灸師・整体治療家として多くの患者さんを診てきた私の父(「自力整体」考案者の矢上裕)は、水毒症の方は、体に出やすい特徴があると言います。

肩や首がコリやすい、足が冷えている。体型は、お腹まわりが肥満、腹筋がゆるんでいる、腰の骨(腰椎)がゆがんでいる、など。

水毒を改善する「1つの習慣」

他にも、次の症状が気になる方は、水毒症のタイプです。

・若いころに比べて低体温になった
・動いてもあまり汗をかかず、むくみを感じる
・胃腸が虚弱
・手足の冷えが気になる
・水太りでふくらはぎが太く硬く、正座が困難で横座りがラク

これらは、典型的な冷え性です。とくに、ひざ痛や腰痛が出やすい方です。

水毒の症状を予防・改善するには、「体温を上げる習慣」が何より大事です。これが若さの秘訣です。

よく歩き、ぬる目の入浴で体を芯から温め、寝る前の自力整体で、血流を促しましょう。

「水毒」は食べ方でも改善できる

水毒は食べるものも関係があります。

水の飲み過ぎのほか、ワイン、甘いもの、果物、生野菜やスムージー、豆乳や牛乳は、水毒をつくりやすい傾向です(※これらが悪いわけではなく、つらい水毒の症状が出たとき、または出そうな時期に控える程度でOKです)。細胞をゆるませ、むくみ、冷やし、コリや痛みをつくります。

逆に、ミネラルを含む海の塩を摂ると、細胞を引き締め、水や老廃物を排泄し、体温を上げ、コリや痛みを楽にします。減塩が叫ばれていますが、自然の海の塩であれば、排泄されやすいので大丈夫です。

また、濃い味噌汁、梅醤番茶(*)、などをコーヒー代わりに飲みましょう。体がポカポカして体温が上がるのを感じたら、様々な不調が改善する前兆です(*梅醤番茶:湯呑みにつぶした梅干し、数滴の醤油、すりおろし生姜のしぼり汁を入れ、番茶をそそいでつくるお茶)。

とくに花粉症で鼻が詰まる方は、鼻に薄い塩水を点鼻すると鼻がスーと通ります

春のハワイ旅行で関節痛が消えた生徒さん

水毒症が出やすい方が、とくに春になると気候に左右されやすいことを知る興味深い話がありました。

父の教室に、ひざの関節痛に悩む、ご高齢の生徒さん(女性)がいらっしゃいます。

春になるととくに、ひざはむくみ、正座はできません。眠りも浅く、夜中、トイレに行きたくなって、何度も目覚めてしまいます。これは、典型的な水毒の症状です。

その生徒さんから、昨年の春、ご家族とともにハワイ旅行へ行かれたときの報告を受けました。

「ハワイはカラッとした気候のせいか、痛かったひざの関節痛が、まったく現れなかったのです。何十年もできなかった正座もできるように。夜も久しぶりに熟睡できました。まるで奇跡が起こったかのように、元気になったのです。でも帰国後、日本の春は湿気が多いせいか、すぐにひざ関節が痛みだしたのです。正座もできません……」

気候が、体内の水分量に影響するわかりやすい報告でした。

父はその後、その生徒さんに合わせた自力整体と食事法を指導。すると水分の排泄力は高まり、ひざの関節痛は和らぎました。

水毒の不調が出たら、やったほうがいいこと

しかし、湿気の多い時期だけハワイに暮らすわけにはいきません。

春に不調が出てつらい時、次のことをやってみてください。

水毒の症状、たとえば関節痛がある方は、夜遅い時間の食事は、何を食べても体に溜まりますので、症状が回復するまで夕食を18時までに済ませて、早く寝る習慣をつけ、体を整えましょう。すると、朝起きた時の関節の痛みは、はるかに減っているはずです。

また、水毒症の典型的な悩みは、夜間の排尿です。すぐに膀胱におしっこが溜まり、夜中に何回もトイレに起きなくてはならないので、ゆっくり眠れないのです。

夜、骨盤のゆがみをとる自力整体(『すぐできる自力整体』でも紹介)をおこなうと、就寝前には膀胱はスッキリ。夜間にトイレに行きたくて目覚めることもなくなるでしょう。

今回は、新刊『すぐできる自力整体』から、むくみ・冷えを解消する「足うら・足首ほぐし」のワークを紹介しましょう。水毒の症状の改善にも役立ちます。

【整体プロが指南】こんな人は老けこみやすい? 春に気をつけたい「1つのこと」矢上 真理恵(やがみ・まりえ)写真左
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し約15,000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。著書に、『すごい自力整体』(ダイヤモンド社)がある。

監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約15,000名が学んでいる。著書に『自力整体の真髄』『はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗