価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になってくるのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

【アイデアを生みだす技術】多くの人に共通する、アイデアがうまく出てこない根本の理由とはPhoto: Adobe Stock

思い込みのブレーキを踏んでいないか

 私が新人だった頃を振り返ってみると、自分自身でアイデアにブレーキをかけていました。

 自動車を運転することを思い浮かべてください。アクセルを踏めば自動車は動きます。アイデアにおけるアクセルは、アイデア発想法のようなものだと思います。世の中には、様々なアイデア発想法があります。インターネットで検索してみれば、あらゆるアイデア発想法が出てきます。

 当時の私も、アイデア発想法をあれこれ調べては使っていました。しかし、出された課題に対して、ひとつもアイデアを持っていくことができない、という日々が続いたのです。

 もちろん、アイデア発想法を利用するのは、有効な手段です。

 しかし、かつての私もそうであったように、アイデアが苦手、と思い込んでいる人が最初にすべきことは、アクセルを踏むことではなく、同時に踏んでしまっているブレーキを外すことです。

 ブレーキは、あなたのココロに存在します。そして、そのブレーキを外すための方法はひとつです。それは、「私にもアイデアは出せる」と自分を信じることです。

思い込みがアイデア発想を阻害する

 あなたは、どうでしょうか。

 私は、学生や社会人の方々に講義をする中で、アイデアに対する間違った思い込みが、アイデアを出すことを阻害していることが多いと感じています。

 サイドブレーキを引いたままアクセルを踏んでいないでしょうか。また、ブレーキペダルを踏んだまま、アクセルペダルを踏んでいないでしょうか。

 私自身がそうであったように、多くの人が、アイデアにおけるブレーキを自分自身で踏んでしまっています。それは、自分にはすごいアイデアなんて出せるわけがない、というアイデアに対する勝手で残念な「思い込み」です。それが、ブレーキとなっているのです。

 このブレーキとなる「思い込み」は、大きく4つあります。

 1.「アイデアはゼロから生みだすもの」という思い込み
 2.「自分は創造的ではない」という思い込み
 3.「ホームランのアイデアでなければいけない」という思い込み
 4.「正しいことこそが答え」という思い込み

 以下、この4つについて、どういうことか説明していきます。

 アイデアをつくることが苦手という方は、自分の経験と照らし合わせながら、ココロの中にブレーキが存在していないか検証してください。このブレーキを外すだけでも、アイデアは生みだしやすくなるはずです。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤 安久(にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター

1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。