「どこに、どんな人が集まり、どう移動しているのか」。マーケティング部門などに活用されている人流解析サービスの中で「実態がすぐに分かる」と注目されているのが、JR東日本の「駅カルテ」だ。Suica(スイカ)の利用履歴を基に、性別・年代などをひも付けた正確な“人の動き”を把握できる点が公的調査とは違う大きな特長だ。

 東日本旅客鉄道(JR東日本)のSuica。交通系ICカードの先駆けとして注目され、利用者の着実な増加によって、発行枚数は1億枚を突破し、2006年にはスマートフォンで利用できる「モバイルSuicaサービス」を始めるなど、日本の“キャッシュレス決済”の歴史を切り開いてきた先駆者でもある。

 そんな多くの人が利用するSuicaは、自治体や企業のマーケティング担当者にとっても“宝の山”であることをご存じだろうか。

「Suicaに登録された、氏名や生年月日、性別などの属性情報に加え、鉄道の利用履歴や購買履歴などを組み合わせれば、さまざまな役立つデータ解析ができます」

 そう説明するのは、JR東日本マーケティング本部戦略・プラットフォーム部門データマーケティングユニットの大橋昌宏氏だ。

JR東日本 マーケティング本部 戦略・プラットフォーム部門 データマーケティングユニット 大橋昌宏

「実際に、当社グループはエキナカのテナントの選定や、コンビニの品ぞろえなども、性別、年代、時間帯を含めたさまざまなデータを参考にしてきました。そうした“宝の山”であるSuicaデータの解析結果を、企業や自治体などのマーケティング活動にも利用していただきたいと思ってサービス化したのが、『駅カルテ』です」(大橋氏)

 JR東日本が22年5月にサービスを開始した「駅カルテ」は、JR東日本の首都圏約600駅におけるSuicaユーザーの乗降情報が分かる統計レポートである。

 これは、個人を識別する情報を排除、プライバシーに配慮した形で統計処理をしているもので、一つ一つの駅ごとに、どの時間帯、どの性別・年代のユーザーが、何人入場して、どの駅に向かったのか、というデータをまとめている。

 月次および年次のレポートの他、月次レポートの内容をサマライズした簡易版も発行。「何年何月の〇〇駅のレポートが欲しい」といった指定購入ができる他、定額料金で欲しい情報が取り放題のサブスクリプションサービスなど、必要な情報に応じて個別にカスタマイズできるのも魅力だ。