上司と部下写真はイメージです Photo:PIXTA

部下に言い出しにくいことを注意するやり方、突発的な事態に巻き込まれたときのうまい切りかわし方……。ビジネス心理学の第一人者が、対人関係での大事なポイントを提言する。※本稿は内藤誼人『振り回されない練習 「自分のペース」をしっかり守るための50のヒント』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。

「リハーサル」しておけば
いざというときに対応できる

「いいたいことがあるのに自己主張ができない」

「本当は断りたいのに、うまく断れずにモヤモヤしている」

 そんな悩みを抱えている人は少なくありません。特に、突発的にこうした事態に巻き込まれた際にうまく対応できず、結局仕方なく相手の要求に従ってしまうというケースは多いことでしょう。

 こうした悩みを解消するためにおすすめなのが、「リハーサル」です。

 たとえば、「行きたくない飲み会に誘われたとき」というような具体的な状況をまず設定します。そして、どう断れば一番カドが立たないのかを考えてみましょう。

「週末は子どもと遊びたいので、ちょっと遠慮させてください」

「最近、夕方からスポーツジムに通うようにしているんです」

「実は、健康診断で引っかかっちゃって。お酒は少し控えてまして」

 セリフを作ったら、そのセリフを何度も口にしながらリハーサルもしておきます。何度も試しておけば、いざというときスムーズに口から出てきます。

 このようなトレーニングを、心理学では「行動リハーサル法」と呼んでいます。

 ウィスコンシン大学のリチャード・マクフォールは、自己主張が苦手な人ばかりを募集し、42人に集まってもらいました。その42人に行動リハーサルの訓練を受けてもらったのです。

 たとえば、「映画のチケットを買うために列に並んでいると、割り込みしようとしている人を見つけました」という具体的な状況に対して、自分なりにどうコメントすればいいのかを考えてもらったのです。「他の人もずっと並んでいるのですから、きちんと最後尾に並んでくださいよ」というように。

 それから何度も口に出してリハーサルしてもらうと、自己主張が苦手だった人もそれなりにうまく自己主張ができるようになりました。

 行動リハーサルの訓練を受けていないグループでは46.16%しかうまく自己主張できませんでしたが、訓練を受けたグループでは62.94%がうまく自己主張できるようになったそうです。

 噺家やお笑い芸人は、テレビのトーク番組で面白いことをポンポン話していますが、すべてをアドリブでやっているのでしょうか。

 いいえ、そうではありません。プロの人たちは、みなあらかじめ面白いネタを仕込んで、しっかりとリハーサルしているのです。だから、テレビカメラの前で、面白いことをいえるのです。

 素人の私たちなら、なおさらです。上手に自分の主張を通すために、状況別のセリフを用意しておき、くり返しリハーサルしておきましょう。