「円安減益」の気配漂うコマツと、
「規模の不経済」に陥った米キャタピラー社

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 今回は、建設機械で国内最大手の小松製作所(以下「コマツ」と略す)と、世界最大手であるアメリカのキャタピラー社を扱う。両社には「最大手」の冠が付くが、どちらの業績にも一長一短がありそうだ。いや、両社とも「一短」のほうに、少し長めの影が見える。

 逆説的な表現を用いてしまった。その真相を、以下で解明していこう。

 今回は作成した図表(キャタピラー社の資金運用表など)が多いので、余談を語ることなく早速、両社の業績比較を行なっていく。次の〔図表 1〕は、本連載でお馴染みのタカダ式操業度分析を使って、両社の業績を解析したものだ。

 〔図表 1〕の左右図とも、縦軸の上限を10兆円までとしている。キャタピラー社については、一律に1ドル85円で換算した。以降も同様である。

 〔図表 1〕左右図にある色付き曲線の意義は後述するとして、黒色の曲線に注目する。これは実際売上高の四半期移動平均である。

 〔図表 1〕左端にある10/12(2010年12月期)を比較すると、この時期、キャタピラー社はコマツの2倍程度の売上規模であった。ところがこの2年間、コマツの売上高は横這いであったのに対し、キャタピラー社は1.5倍にまで成長した。コマツにしてみれば、キャタピラー社に大きく水をあけられてしまったようだ。

単利計算構造のCVP分析と
複利計算構造のタカダ式操業度分析

 本連載を初めて読まれた人にとって、「タカダ式操業度分析って何?」と疑問が湧くところ。キャタピラー社の決算データを使って、基本的な考えかたを説明しよう。次の〔図表 2〕は左右図ともに、直近までの12四半期(=4四半期×3期分)を年間ベースに直して分布させたものだ。

 〔図表 2〕左図は、管理会計や経営分析に関する書籍やビジネススクールなどでは必ず紹介されるCVP分析(Cost Volume and Profit Analysis)に基づいて描いたものだ。損益分岐点分析や限界利益分析とも呼ばれる。

 CVP分析では12個の点を、〔図表 2〕左図の上に表示している1次関数(y=ax+b)の総コスト直線で繋ぎ、左下へ延伸させて縦軸とぶつかったところで固定費を導き出す。〔図表 2〕左図では、赤色の総コスト直線を伸ばしていった先に「CVP固定費2416億円」と表示している。

 〔図表 2〕左図は、書籍やビジネススクールだけでなく、世に普及している情報システムの「すべて」に搭載されていることから、絶対的通説として君臨している。1次関数を用いていることから、絶対的通説の基本は「単利計算構造」である点に注意してほしい。

 〔図表 2〕右図にも、左図と同じ12個の点を配置させている。タカダ式操業度分析は、これらの点を赤色の複利曲線(指数曲線)で繋ぐ。〔図表 2〕右図の上のほうに、この総コスト曲線の基礎となる「自然対数の底eを用いた指数関数」を表示している。「e」は、複利を内蔵した超越数である。

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高田直芳 [公認会計士]

1959年生まれ。栃木県在住。都市銀行勤務を経て92年に公認会計士2次試験合格。09年12月〜13年10月まで公認会計士試験委員(原価計算&管理会計論担当)。「高田直芳の実践会計講座」シリーズをはじめ、経営分析や管理会計に関する著書多数。ホームページ「会計雑学講座」では原価計算ソフトの無償公開を行なう。

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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略

大不況により、減収減益や倒産に直面する企業が急増しています。この連載では、あらゆる業界の上場企業を例にとり、どこにもないファイナンス分析の手法を用いて、苦境を克服するための経営戦略を徹底解説します。

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