豪華な新社屋に移転した会社は
業績、または株価のピーク

 それでは「ダメ会社を見分ける法則」をいくつかご紹介していきましょう。
 投資家の間で広く言い伝えられ、ほぼ絶対的に信じられている法則があります。それは、「豪華な新社屋に移転した会社は、その時点が業績のピークか株価のピーク、またはその両方である」というものです。また、新社屋建設だけでなく、バブル臭のするような話題のピカピカビルに賃貸で入る場合も同様です。

 新社屋やピカピカのビルは、経営者のメンタルの問題を表していると言えます。立派な建物に会社が移ることによって達成感を得てしまえば、会社はそれ以上伸びなくなってしまうでしょう。このため、新社屋ビル建設もしくは移転の時が株価のピークとなり、その後、業績を上げるだけのパワーが失われてしまうのです。

 財務面から見ても、新社屋建設という事業によって資金が固定化されてしまい、財務戦略から機動性が失われることになります。

また、新社屋建設は、付加価値を生まないものに対する投資であると言っていいでしょう。工場を建てたり、広告宣伝費をかけたり、企業を買収したりといった行為であれば、資金の回収は早く、そこから付加価値も生まれます。しかし、社屋の建設は5年、10年というタームで見れば資金的に負担が大きく、付加価値も生みませんから、前向きな投資と評価することはできません。

新社屋は社員のメンタルにも
影響してくる!

「新社屋建設や移転は付加価値を生まない」というと、「立派なビルに入居すれば社員がやる気を出すので、士気向上というメリットがあるのではないか」という人もいます。

 確かに外から見ていれば、「こんなに豪華なビルで仕事ができるのであれば、社員が心機一転頑張ろうと感じるのではないか」と思えるかもしれません。しかし実際のところ、こういったケースで勢いがついて業績が伸びたという話はほとんど聞きません。

 これは、社員が「ウチの会社は安泰」とのんびりしてしまうことが原因でしょう。「会社にぶら下がっていればよい」というメンタリティを持った社員が増えれば、企業の成長が望めないことは明らかです。

 また新社屋を建設すると新卒採用などで応募者が急増することがあります。しかし、もし100人だった応募者が1000人に増えたとしたら、増えた900人は「豪華なビルで働きたい」という理由で応募してきたことになります。こうした人たちは、「会社を自分の手で成長させたい」というより、「つぶれそうにない会社に入って安泰に暮らしたい」という気持ちのほうが強いと考えるのが自然でしょう。

 もちろん、成長している会社は社員が増えるので引越しをする必要がありますし、成長段階で引越しをするのは当然です。ただしその時、「身の丈に合っているか」という点はとても重要だと思います。