ものづくりの現場では当たり前のように進められている改善活動だが、オフィス業務においては全く行われていないことも多い。「部下がどんな業務をやっているのかわからない」「課題はあるがどう改善していいかわからない」、マネジャーの多くはそんな悩みを抱えている。オフィス業務のすべてを「目で見てわかる」状態にして、業務の把握、分析、改善が可能になる「業務プロセス可視化」法とツールについて、システム科学社長の石橋博史氏に聞いた。

マネジャーは業務を把握する指針を持てないでいる

石橋博史 株式会社システム科学 代表取締役社長
1962年から24年間、自動車機器メーカーに勤務し、教育担当、人事、総務、工場長、社長室の職務を歴任。1986年、システム科学を設立。業務革新の実践および「HIT法」の開発・導入、2010年2月に「業務プロセスの可視化法とチャート作成システム」で特許取得。主な著書は、「業務革新の実践手法」(ダイヤモンド社)、「可視経営 仕事がみえれば会社は変わる」(日経BP企画)「意識・行動が変わる続・可視経営」(日経BPコンサルティング)。

 4月の人事異動で新任のマネジャーとなった人も多いはずだ。その後数カ月たった今、彼らはこんな問題に直面しているのではないか。「部下がどんな業務をやっているかわからない」「業務のムダが目立つ」「組織のモチベーションが低い」などなど。しかし、そのように感じながらも、「どこから手を付けていいかわからない」「業務プロセスを改善するためのノウハウを知らない」という人もいるだろう。

 それもそのはず、日本のマネジャーのほとんどは、具体的に何をどうマネジメントすればいいか、ノウハウを持っていない。特に【方針展開】【異常処理】【人材育成】の3点に弱点が目立つ。マネジャーの行うべきマネジメント業務だが、それができていないことが多い。なぜなら、それらの基本となる「部下の業務」を把握するための尺度・指針・手法を持っていないからだ。

 例えば業務量の把握について。業務量は忙しい時と暇な時の波がある。それ自体は当たり前だが、問題は、変化する業務量に合わせて、適切な人員配置ができていないことだ。たいていの企業では、ピーク時の業務量に合わせた人員配置になっていることが多い。余剰人材を抱えるのは人材のムダづかいであり、業務効率の低下につながる。ピーク時の業務量が多すぎるのもまた問題で、業務品質の低下を招く要因ともなる。