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辻広雅文 プリズム+one

富士通とトヨタに見る“日本的ガバナンス”の崩壊~なぜ取締役会は経営監督機能を果たせないのか

辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]
【第96回】 2010年3月10日
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 不測の事態が企業経営に生じたとき、事態の収拾に客観的判断を下すべきは誰か。

 昨日まで元気だった社長が突如、健康上の理由で辞任し、あるいは、世界の複数の地域で自社製品の品質問題が津波のように襲い掛かってくるという有事に際して、いかなる対処をすべきかを決めるのは誰か。

 それは、取締役会である。

 取締役会は経営監督機能を担う。つまり、経営者の職務遂行を監督する。また、最終かつ最高の意思決定機関と言ってもいい。その役割は、非常時において格段に重くなる。第三者的立場から事実調査を指示するなど、判断の客観性、的確性を担保する機能を十分に生かして、企業全体の価値が長期的に持続、向上させるという観点からジャッジする――これが、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の教科書が教えるところの基本である。従って、コーポレート・ガバナンスの強化とは、この基本動作を身に付け、実効性を高める努力を組織的に行なうことである。

 だが、日本を代表するグローバル企業である富士通とトヨタ自動車が、この基本をいまだ身に付けていないことが明白になってしまった。後述するように、取締役会が発揮すべき機能を発揮した形跡はない。この2社の事例を検証すると、日本の大企業の意思決定が依然として形式的全体一致方式に則っていて、そもそも客観性や第三者立場に立った監督機能などを経営側が欲していない、という古くて新しい現実をまざまざと思い知らされる。

 日本の大企業の多くは、非常時、不祥事に際して似通った行動様式をとる。企業内で、いわば二つの綱引きが激しくなるのだ。一つは、内部官僚同士の綱引き、もう一つは、社長経験者を中心とするOB長老たちの綱引きだ(ある経営コンサルタントは、“OBガバナンス”と呼ぶ。経営に責任を負わない歪んだ権力の跋扈、という揶揄である)。現役・OBたちがさまざまに動き、一部結託し、権力闘争の裏返しとして緊急事態の対処策が打ち出されるのである。

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辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]

1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。


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