医師は病気のプロ
健康のプロではない

 西洋医学の世界には「病気」と「健康」という区分しかなく、通常は病気になって初めて医師の世話になる。

 ところが実際には、健康か病気かを明確に区分することができないグレーゾーンの領域がある。現代の西洋医学では病気とは見なされないが、いつ発病しても不思議ではないという領域を指す。このグレーゾーンのことを、東洋医学では「未病」と呼んでいる。

 通常、人生の折り返し点とも言える40代になれば、臓器、血管、筋肉、骨などの老化が進み始め、この未病の領域に入る。健康そうに見えても、40代を過ぎれば、何らかの病をいつ発病しても不思議ではないリスクを抱えて日常生活を送っているということだ。

 誰しも、できることならこの「未病」の段階で病気の予兆を発見し、早期に対策を施し、病気の芽を摘み取りたいたいと望む。だからこそ、予防医療の一つである人間ドックを受診するようになる。

 ところが通常の人間ドックの場合、「病気」と診断されない限り、「運動が必要です」「お酒の飲み過ぎと、塩分の摂り過ぎに注意してください」と言ったごく常識的なアドバイスはもらえても、個々人の体質や生活環境を考慮した上で、健康を維持するために医療レベルでどうすべきかという具体的なアドバイスはもらえない。通常の医師は病気のプロであり、健康のプロではないからだ。

 となれば、私たちは、自分で自分のカラダをマネジメントするという、攻めの姿勢で予防医療を意識するしかない。