佐藤氏によれば、釧路市では、生活保護の「水際作戦」は行われていないという。自治体によっては、生活保護の申請書を「窓口に置かない」「ケースワーカーに渡す枚数を『1ヵ月に2枚』のように制限する」という形で「水際作戦」が行われている場合もある。しかし釧路市では、窓口に申請書を置いている。訪れた人々が自由に手に取れるわけではなないが、使用枚数に関する制限は行なっていないという。

 就労機会の少ない現実はそれはそれとして、釧路市では、生活保護の「生業扶助」を積極的に活用し、さまざまな自立支援プログラムを実施している。そこには、中学生に対する学習支援・高校進学支援も含まれている。また、生活保護世帯の高校生の子どもに対しては、就職希望であれば、運転免許の取得を生業扶助によって支援している。就職が内定しているかどうかとは無関係に、である。佐藤氏はこのことを、

「スタートラインに立たせる」

 と言う。平成24年度には、82名の高校3年生に運転免許を取得させたそうだ。うち60名以上が高校卒業と同時に就労し、生活保護廃止(脱却)となった。

 また釧路市では、母子世帯の母親の就労などについても、独自の取り組みを行なっている。高齢化の進む釧路市では、介護職の就労機会は比較的多い。しかし、介護職としての就労には、資格が必要だ。幼児を抱えた母親たちにとっては、資格取得が最初の「壁」となる。就労していなければ保育所を利用することもできないからだ。いずれにしても、経験したこともない仕事を理解し、「その仕事に就きたい」というモチベーションを喚起するところから始める必要があった。

 釧路市では、生活保護を利用している母子世帯の母親たちに対し、訪問介護を行うヘルパーに同行する機会を設けた。無免許の母親たちには、介護の仕事を行うことはできない。しかし、ヘルパーの仕事を手伝うことはできる。また、訪問先の高齢者の話し相手をすることもできる。そこで、高齢者に、

「ありがとう、楽しかった」

 と感謝されることもある。もちろん、ヘルパーの仕事を理解することができ、

「大変な仕事だけど、免許を取得して、その仕事に就きたい」

 という意欲を喚起されたりもする。

「資格を取りたい」という意志を抱いた26人の母親たちに対し、釧路市は、保育所に子どもを預けて資格取得を行う機会を提供した。うち16人がヘルパー資格を取得し、1年後までには就労したという。

 この話をしながら、佐藤氏は、

「人は変われる」

 と強調し、指導・指示だけではないケースワークの必要性、「認める」ということの重要性を述べた。