最近、ますますテレビがつまらなくなったという声は多い。理由は様々だろうが、先般開催されたフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の株主総会では、太田英昭副社長自らが、「金属疲労」を起こしていると口にした。「若者のテレビ離れ」に危機感を持つのは、足もとで視聴率の低下が著しいフジテレビだけではない。果たして、テレビに未来はあるのか。テレビウォッチャーやテレビマンの意見を交えながら、テレビがつまらなくなった理由を徹底分析する。(取材・文/横山渉、岩見杏/編集協力・プレスラボ)
業績悪化でも日枝会長は留任のなぜ
大荒れとなったフジHDの株主総会
「フジは本当に大丈夫なのか?」
6月27日、東京・台場の「ホテル グランパシフィック LE DAIBA」で開催されたフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の株主総会。そこに出席した筆者は、こんな感想を持った。
今回焦点となったのは、フジHDとその子会社であるフジテレビの社長交代である。両社ではこれまで、トップ経営陣(会長、社長、副社長)は兼務だったが、初めて分離することとなった。フジHDでは、豊田皓社長が副会長に就任し、太田英昭副社長が社長に昇進する。一方フジテレビでは、豊田社長が副会長となり、亀山千広常務が社長になる。
しかし、株主が違和感を覚えたのは、日枝久会長ただ1人が留任したことである。日枝氏は1988年にフジテレビ社長に就任して以来、四半世紀にわたってトップに君臨し続けている。かねてより、「独裁体制ではないか」と指摘する向きもあった。
株主がこうした経営体制のひずみと目したのが、2013年3月期にフジHDの当期純利益が対前年比▲48.8%という大幅な減益に陥ったことだ。増益だった日本テレビHDやテレビ朝日と比べて、業績不振が目立つ。これは、前年度のサンケイビルの連結子会社化により発生した、負ののれんを計上した影響などが大きかった。一方、営業利益は対前年比でプラスを維持した。
ただし、問題は増益の中身だ。増益の牽引役は新たに加わった都市開発事業などで、既存の放送事業、映像音楽事業、生活情報事業、広告事業などは軒並み減益となっている。主力の放送事業での減益は、核となる放送収入が対前年比2.1%減に終わったことなどが響いた。視聴率競争で昨年は日本テレビばかりでなくテレビ朝日にも抜かれ、民放キー局5社中3位に転落した影響も大きいと見られる。