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〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?

「トイレと携帯電話のどっちが重要か」に
答えられるか?
―「シード・コンテスト」と週末ものづくりで学んだ
日本の技術力を途上国で活かす方法

瀬戸義章 [作家/ジャーナリスト/tranSMS代表]
【第2回】 2013年7月17日
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僕たちは、意味のある〈もの〉をつくれているのだろうか? ――いつの間にかかつての輝きを失ってしまった〈ものづくり〉という言葉。ところが現在、問題解決型ものづくりである「ソーシャル・ファブリケーション」という潮流が生まれ、〈ものづくり〉が本来持っている「人と人とをつなぐ」という力が再び注目されている。
第2回となる今回は、僕が「シード・コンテスト」というプロダクトデザイン&ビジネスコンテストに参加し、実際に東ティモールを訪れることで経験し、学んだことを通して、現地で技術を適切に使ってもらい、定着させるために大切なことを伝えたい。

なぜ、日本の「技術力」は途上国で活躍できないのか?

 あるイベントで、こんな質問を受けたことがある。

 「その村の家庭には、トイレがないそうですね。それなのになぜ、みんな携帯電話を持ってるんですか?」

ガスコンロや冷蔵庫・洗濯機はおろか、トイレすらない発展途上国の人々でも、携帯電話を使っている。世界を旅し、取材し続けているうちに、いつの間にかそれが当たり前になってしまい、一瞬、答えに詰まってしまった。

東ティモールの若者が持つスマホ。水道やガスのない村でも、見かけることができた

 料理なら薪を燃やせばいい。保存のきくものか、その日採れた食材を使うならば、冷蔵庫はいらない。洗濯物は手と石で洗えばいい。トイレはそのあたりですませることができる。でも、隣町で一人暮らしをしている息子の様子を聞くには、電話が必要だ

 途上国の携帯電話は安い。東ティモールの田舎でも、15ドルで購入できる。ITU(国際電気通信連合)によると、2011年の全世界における携帯電話普及率(契約数/人口)は、85.7%にも上るそうだ。

 携帯電話が買えたら、次はバイクが欲しくなる。1台あれば、家族で移動できる(僕が見た最高記録は6人乗りだった)し、物もたやすく運べるようになるからだ。

 ポイントは「テクノロジーが発展途上国の生活に与えるインパクトは、日本のそれと比べてはるかに大きいが、テクノロジーを受け入れる感覚には大きな違いがある」ということである。

 このすれ違いをそのままにしておくと、せっかく日本の技術力を駆使して作った、太陽電池が、新型カマドが、水道が、埃を被ったまま放置されることになる。たんにものを〈作る〉のではなく、きちんと〈届け〉、現地の文化として〈定着〉させる事が必要だ。僕は、あるコンテストへの参加をきっかけに、こうしたことが意識できるようになった。

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瀬戸義章(せと・よしあき) [作家/ジャーナリスト/tranSMS代表]

1983年、神奈川県川崎市出身。長崎大学環境科学部卒業。都内の物流会社でリユースビジネスの広報に携わった後、独立。東南アジアのリサイクル事情や、東日本大震災の復興の様子を取材して歩く。2012年、発展途上国向けのプロダクトデザイン&ビジネスコンテストである「See-D Contest2012」にて最優秀賞をチーム「tranSMS」の仲間と共に受賞し、2013年から東ティモールへの導入・実施を始めている。著作に『「ゴミ」を知れば経済がわかる』(PHP研究所)がある。


〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?

日本産業には欠かせない、〈ものづくり〉という言葉。だが、いつからかこの言葉は力を失ってはいないだろうか? 大量に消費されることを前提とした〈ものづくり〉に、使い手である消費者だけではなく、作り手である生産者も、疲弊してはいないだろうか。

そこで本連載では、いま日本を含む世界で密かに新しい〈ものづくり〉の潮流である、問題解決型ものづくりともいうべき「ソーシャル・ファブリケーション」の世界を様々な側面から紹介したい。

「ものづくりを通じて、社会課題を自分ごと、自分たちのこととして解決する」という可能性を知るとき、大量生産・大量消費のなかで分断された作り手と使い手は再びつながり、国境を超えたビジネスが立ち上がる。

「〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?」

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