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日本を元気にする経営学教室III

ものづくり企業のサービス価値創造 (前篇)
アウト・オブ・ボックスの思考
――神戸大学大学院経営学研究科教授 松尾博文

シリーズ「オペマネの思考法」(5)

松尾博文 [神戸大学大学院経営学研究科教授],滝波純一 [ヘイ コンサルティング グループ プリンシパル]
【第9回】 2013年5月20日
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「オペマネの思考法」を解説するシリーズの第5回目。今回はものづくり企業のサービス価値創造の前篇として、ものづくりという箱の中に入ったまま戦略策定をしている製造企業は、アウト・オブ・ボックスの思考法を取るべきであるということを論じる。ものづくりという箱の中での、現状維持の発想ではいけないということであるが、箱から出て考えることの危うさを指摘し、すっとんきょうな思いつきではなくて、合理的な解を見出すことを考える。その場合、価値創造ということに対する正しい認識が重要になる。

 価値ということに関して、「日本の製造業の高付加価値偏重はいけない」とか、「価値創造だけでなくて、価値獲得を考えよ」とか、「ワクワクするような製品を開発せよ」とか価値に関するいろいろな提言を見聞きする。もちろん、マーケティングでも、顧客価値は中心的なコンセプトである。

 「オペマネの思考法」の5回目ということで、アウト・オブ・ボックス(箱から出て)の思考法ということを紹介する。自分の事業が所有する部分のビジネスプロセスのテリトリーを壁で囲った箱というものを想定する。この箱から出て、サプライチェーン全体のビジネスプロセスを俯瞰して、思考するということである。

 アウト・オブ・ボックスして考えよというと、とんでもなく奇抜、奇異な発想を求めていると誤解されそうだが、そうではなくて、合理的な解を導こうというものである。また、ものづくりの経営者がアウト・オブ・ボックスして、思考を試みる時に、ものづくりの価値観を捨てるべきではないだろう。

 今回は、オペマネ思考法の基盤となる観念的、抽象的な話になるので、言葉づかいを注意深くフォローしていただきたい。箱から出て考えるときに理念を置き去りにする危険があるので、何が理念であるのかを見極めてからにしたい。次回は、今回の観念的な理解を基盤として、ものづくり企業のサービス価値創造の具体的な話に移行する。

ものづくりの価値観

 ものづくりの現場で、QCDが重要であるということには、コンセンサスがある。  Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の3点で、改善を繰り返すということが強調されている。

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松尾博文 [神戸大学大学院経営学研究科教授]

まつお・ひろふみ
京都大学工学部数理工学科卒業。1984年米マサチュ-セッツ工科大学大学院経営学研究科博士課程修了。米ペンシルバニア大学経営大学院客員準教授、米テキサス大学オースティン校経営大学院教授(Fred H. Moore Professorship)、筑波大学社会工学系教授を経て、2004年から神戸大学大学院経営学研究科教授。専攻はオペレーション・マネジメントとサプライチェーン・マネジメント。国際的学術雑誌の論文多数、編集委員を歴任。現在、日本オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会会長。

滝波純一 [ヘイ コンサルティング グループ プリンシパル]

たきなみ じゅんいち/京都大学工学部卒業、同大学院応用システム科学修士、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営学修士(MBA)。東レ株式会社、ボストン コンサルティング グループを経て、2009年より現職。2010年より同社コンサルティング部門責任者。医薬品、消費財、流通、情報通信等の幅広い業界に対し、グローバル人事制度構築、リーダー育成、M&A支援等、幅広いコンサルティングを実施。


日本を元気にする経営学教室III

【シリーズ「オペマネの思考法」/松尾博文】
オペレーションズ・マネジメント(オペマネ)は欧米のビジネススクールでは必須科目である。オペマネは、製造業とサービス業の事業プロセスを対象とする学問体系で、企業と組織の事業プロセスを中心に、製品、顧客、マーケティング、経営、戦略を考える科目である。本シリーズでは、オペマネの基本的な思考法を解説し、日本の製造業が陥っている問題点の解決策を、事業プロセスの見直しというオペマネの方法論から議論する。簡単な事例、極端な事例、理論と実践を取り混ぜて、論理的に考えるための糧(Food for thought)を提供することを目指す。

 

【シリーズ「カルチャー・トランスフォーメーション」/滝波純一】
企業文化は経営そのものである」というのは、1990年代に瀕死のIBMをよみがえらせたルイス・ガースナーの言葉である。多くの経営者は企業文化が業績に及ぼす影響がいかに大きいか知っている。一方で、企業文化を変革することが、いかに難しいかも、多くの人の知るところである。近年、人事・組織の領域では、日本よりも、海外の方が一歩進んでいると言わざるを得ないのだが、海外では「カルチャー・トランスフォーメーション」として、多くの企業が企業文化の変革に取り組んでおり、そこから有効な方法論も見出されつつある。事業環境が激変する中、日本企業にとっても企業文化の変革は喫緊の課題であり、海外での取組・確立されつつある方法論から学ぶべき点が多いのではないだろうか。本連載では、「カルチャー・トランスフォーメーション」について、紹介していきたい。

 

「日本を元気にする経営学教室III」

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