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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

未来ある20代社員80人が涙した壮絶リストラの内幕
元事業部長が懺悔する「追い出す側」の奔放な論理

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第7回】 2013年8月20日
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 本連載では、過労死で死亡した社員の遺族や、会社からリストラされ、悶えながらも闘う社員の姿を紹介してきた。公的な機関の労働問題相談員も取材するなどして、バランスには配慮したつもりだが、もしかするとリストラに携わる立場の社員の本音や会社側のからくりを、十分に伝えられなかったかもしれない。

 そこで今回は、「追い出す側」に取材を試みた。登場するのは、数年前、大規模なリストラを行った中堅広告代理店(正社員数600人)の元事業部長(46歳・男性)である。本文中では、この男性をA氏と記述する。当時A氏は、自らが責任者を務める部署に在籍していた正社員130人のうち、70~80人から辞表を取った。わずか数ヵ月以内のことだった。

 しかも、未来ある23歳~28歳の社員たちをターゲットにした。この異常な経験が原因で、A氏は会社の上層部に理解できぬ思いを強く抱き、数ヵ月前にこの会社を依願退職した。

 ブラック企業で20代社員を襲ったリストラの裏側を明らかにすることで、悶える職場の断面を描きたい。より状況を正確に伝えるため、筆者とA氏とのインタビュー形式でお伝えする。


取材は、都内中心にあるオフィス街で行われた

無節操、無計画な採用で
入社1年目からリストラ対象に!?

A氏 2006~07年は、新卒にしろ中途にしろ、次々と採用した。正社員50人の部署が、わずか数年間で130人ほどになった。

 あの頃は景気が良かった。採用戦線では、「1980年代後半のバブル期の再来」と言われていた。広告業界も業績を拡大しつつあった。だけど私は、「社長たちは危ないことをしているな」と思った。

筆者 危ない、とは?

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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