本連載では、過労死で死亡した社員の遺族や、会社からリストラされ、悶えながらも闘う社員の姿を紹介してきた。公的な機関の労働問題相談員も取材するなどして、バランスには配慮したつもりだが、もしかするとリストラに携わる立場の社員の本音や会社側のからくりを、十分に伝えられなかったかもしれない。

 そこで今回は、「追い出す側」に取材を試みた。登場するのは、数年前、大規模なリストラを行った中堅広告代理店(正社員数600人)の元事業部長(46歳・男性)である。本文中では、この男性をA氏と記述する。当時A氏は、自らが責任者を務める部署に在籍していた正社員130人のうち、70~80人から辞表を取った。わずか数ヵ月以内のことだった。

 しかも、未来ある23歳~28歳の社員たちをターゲットにした。この異常な経験が原因で、A氏は会社の上層部に理解できぬ思いを強く抱き、数ヵ月前にこの会社を依願退職した。

 ブラック企業で20代社員を襲ったリストラの裏側を明らかにすることで、悶える職場の断面を描きたい。より状況を正確に伝えるため、筆者とA氏とのインタビュー形式でお伝えする。


未来ある20代社員80人が涙した壮絶リストラの内幕 <br />元事業部長が懺悔する「追い出す側」の奔放な論理取材は、都内中心にあるオフィス街で行われた

無節操、無計画な採用で
入社1年目からリストラ対象に!?

A氏 2006~07年は、新卒にしろ中途にしろ、次々と採用した。正社員50人の部署が、わずか数年間で130人ほどになった。

 あの頃は景気が良かった。採用戦線では、「1980年代後半のバブル期の再来」と言われていた。広告業界も業績を拡大しつつあった。だけど私は、「社長たちは危ないことをしているな」と思った。

筆者 危ない、とは?