ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?

オバマのおばあちゃんに届いた、
ファブラボ鎌倉のレザースリッパ
――「つくる楽しさ」とアイデアをシェアする文化が
次なるイノベーションを生む!

瀬戸義章 [作家/ジャーナリスト/tranSMS代表]
【第6回】 2013年8月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

「ものづくり」において、アイデアや設計図は、その製品の命であり、公にするものではない――。こうした「常識」に反するかのように、すべてのリソースをオープンにし、しかも世界各国でイノベーションを生み出している国際的な実験工房のネットワーク、「ファブラボ」。2013年3月にはオバマが自らの政策に取り入れるなど、教育やイノベーションの面での可能性は計り知れない。
今回は、問題解決型ものづくり「ソーシャル・ファブリケーション」を体現する存在とも言えるファブラボのうち、日本で最初に生まれたファブラボ鎌倉と、そこで一人の革職人が生み出したアイデアが国境を超えて広がっていくストーリーを通して、オープンソースとイノベーションの関わりを探る。

なぜ、オバマはファブラボを重要視するのか?
「創造性の教育」としてのファブラボ

 2013年3月、米国のオバマ政権は「NFNL(National Fab Lab Network)」の設立を宣言した。NFNLは、市民のための実験工房であるファブラボ(Fablab)を、10年以内に70万人につき1ヵ所建設することをゴールとしている。またオバマ政権は、全米の小学校に、ファブラボが備えるデジタル工作機械を導入することも進めている。

 なぜ、彼らはこれほどファブラボに注目しているのだろうか? その理由の一つは、ファブラボの持つ〈教育〉への可能性にある。自分の欲しいものを自分の手でつくり、現実世界にものを生み出すというファブラボのコンセプトは、〈創造性〉を養うことに直結しているのだ。

 ファブラボにおけるものづくりは、「Learn(ツールの使い方を学ぶ)」「Make(ツールを使って実際にものをつくる)」そして、「Share(その成功体験や失敗体験を他者と分かち合う)」という3つのステップを踏む。このプロセスは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の人気講座「(ほぼ)なんでもつくる方法(How to Make (Almost) Anything)」から生まれたものだ。

ファブラボのロゴ。赤がLearn(学ぶ)、青がMake(つくる)、緑がShare(分かち合う)を表している

 最後に「分かち合う」ことで、その体験は個人を離れ、コミュニティの知恵として蓄積される。ファブラボのロゴマークに使われている3色は「学ぶ」「つくる」「分かち合う」の循環をあらわしているそうだ。

 この「学ぶ」「つくる」「分かち合う」というプロセスは、〈教育〉に効果的なだけではない。今、このファブラボが持つ文化によって、ソーシャル・ファブリケーション(問題解決型ものづくり)における素晴らしくユニークな物語が生まれようとしている。

 そしてそれは、日本の鎌倉から始まった。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

瀬戸義章(せと・よしあき) [作家/ジャーナリスト/tranSMS代表]

1983年、神奈川県川崎市出身。長崎大学環境科学部卒業。都内の物流会社でリユースビジネスの広報に携わった後、独立。東南アジアのリサイクル事情や、東日本大震災の復興の様子を取材して歩く。2012年、発展途上国向けのプロダクトデザイン&ビジネスコンテストである「See-D Contest2012」にて最優秀賞をチーム「tranSMS」の仲間と共に受賞し、2013年から東ティモールへの導入・実施を始めている。著作に『「ゴミ」を知れば経済がわかる』(PHP研究所)がある。


〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?

日本産業には欠かせない、〈ものづくり〉という言葉。だが、いつからかこの言葉は力を失ってはいないだろうか? 大量に消費されることを前提とした〈ものづくり〉に、使い手である消費者だけではなく、作り手である生産者も、疲弊してはいないだろうか。

そこで本連載では、いま日本を含む世界で密かに新しい〈ものづくり〉の潮流である、問題解決型ものづくりともいうべき「ソーシャル・ファブリケーション」の世界を様々な側面から紹介したい。

「ものづくりを通じて、社会課題を自分ごと、自分たちのこととして解決する」という可能性を知るとき、大量生産・大量消費のなかで分断された作り手と使い手は再びつながり、国境を超えたビジネスが立ち上がる。

「〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?」

⇒バックナンバー一覧