「被災地応援ファンド」で世間の注目を集めたミュージックセキュリティーズ。彼らがマイクロ投資プラットフォーム「セキュリテ」で募集している小口投資で事業や地域を育てる小口ファンドは、これまで100を超える事業者に、34億円を調達しました。ファンドの対象事業の売上に応じた分配に加えて、出資者は金銭以外の「リターン」も享受しているといいます。それは何なのでしょうか。(構成:齋藤麻紀子)

ファンとのつながりが、新しい「リターン」を生む
小口投資だからこそ見えた、新しい投資のかたち

――小口投資で事業や地域を育てる「セキュリテ」は、これまで100を超える事業者にご利用いただいていると伺いました。事業者にとって、応援するファンから資金調達ができるのは有難いことですが、ファンのメリットをどう考えますか。

「消費者以上、従業員未満」の関係性が<br />成長への原動力に<br />――出資者と事業者の「つながり」から生まれる<br />「コミュニティリターン」とは?小松真美(こまつ・まさみ)
ミュージックセキュリティーズ株式会社 代表取締役
2000年12月ミュージックセキュリティーズを創業し、『もっと自由な音楽を。』をモットーに、こだわりを持ったインディペンデントなアーティストの活動の支援をする仕組みとして音楽ファンド事業と音楽事業を開始する。2006年より音楽以外のファンドの組成を開始し、現在は純米酒の酒蔵、農林水産業、アパレル、Jリーグチーム、再生可能エネルギー、地域伝統産業等190本超のファンドを組成する。2011年「セキュリテ被災地応援ファンド」、2013年「セキュリテエナジー」、「ソダッテ阪神沿線」プロジェクトを開始した。2013年、さらに多くの人、そして事業者に活用してもらうために、大阪に支社を設立。

小松 まず、どんなファンドであっても、マイナスになっていいファンドはありません。ですから私たちは、出資してくれたファンの方に、経済的なリターンをきちんとお返しせねばと考えています

――経済的なリターンが十分でなかったファンドはありますか。

小松 あります。償還率が30%〜40%に終わったファンドもあります。もちろんそれは反省すべきことですが、一方でリターンには非経済的なものもあると感じています。

――なんでしょう。

小松 音楽ファンドでいえば、好きなアーティストの曲を聴けるという楽しみ、アーティストの制作活動を応援しているという実感です。

――でも、制作活動にもお金を出し、CDにもお金を出すという行為は、一見奇妙にも思えます。

小松それだけ応援したいという気持ちや楽しみがある、ということです。大手のレコード会社に所属していたら、聴くことができなかったのかもしれませんから。

――御社は、ファンドを集めている途中や集め終わったあとも、事業者と出資者の交流の場を設けています。このような場から、非経済的なリターンは生まれているのでしょうか。

小松 はい。たとえば、当社は頻繁に事業者訪問ツアーを実施しています。出資者、もしくは出資を考えている人と一緒に、事業者を訪問するというツアーです。このとき、当社の社員はツアーコンダクターに早変わりするのですが(笑)、実はツアーをやっても基本的に儲けはないんです。