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 次作執筆のための取材を進めています。その中で先日、こんな話を聞かせていただきました。

 1970年代に、旧ソ連との合弁事業に参加し、技術者リーダーとしてロシア人技術者たちを率いた方です。日本式に慣れた彼から見ると、ロシア人たちは要領が悪く、気位ばかり高くて、学ぶ意欲も少ない。作業が大幅に遅れ、納期に間に合わないのではないかというありさまでした。

 その方は、東京からやってきた上司に状況を報告して叱責され、たまらず「納期を守れというなら、日本人技術者を寄越してください」と訴えたそうです。これに対して、上司は何も言葉を発することなく、手近なメモをちぎり、万年筆で何か書き込んで彼に渡したのです。そこには次のように書いてありました。

 「悪い連隊はいない。悪い大佐がいるだけだ。ただちに大佐の首を切れ」

 これはナポレオン・ボナパルトの言葉です。

 私の著作『ザ・ロスチャイルド』に準主役として登場するナポレオンは19世紀初頭、激動のヨーロッパに現れた稀代の英雄です。地中海の孤島・コルシカの没落貴族の家に生まれ、一代でフランス皇帝に登り詰め、ヨーロッパの大半を版図に収めました。ナポレオンの勃興の過程を分析すると、彼がリーダーシップについて深い洞察を培っていたことがわかります。

 あるとき彼の兵営で、ひとりの将軍が「兵士たちの勇気を鼓舞するため報奨金を出しましょう」と提案しました。これに対してナポレオンは「勇気は金では買えない」と応じます。

エジプト遠征の演説で兵士たちを鼓舞したナポレオンエジプト遠征の演説で兵士たちを鼓舞したナポレオン
The Battle of the Pyramids,21st July 1798
©Bridgeman/PPS

 「人はわずかな日当や些細な名誉のために命を投げ出すのではない。だから、諸君は彼らの心ふるわす魂にこそ応えなければならない」。自分たちの任務に、より高い意味づけをすることによって、使命感や誇りを持たせること、つまりビジョンの共有が重要だというのです。彼のリーダー哲学が具現化した最良の例は、エジプト遠征での演説でしょう。

 「兵士諸君、四千年の歴史が君たちを見下ろしているぞ!」

 単に、一生懸命戦えと言われるよりも、何百倍もやる気の出る言葉です。リーダーのあるべき姿について述べたナポレオンの言葉をご紹介しましょう。

 「リーダーとは、希望を配る人のことをいう」

 みなさんは、部下やチームメンバーに希望を配っていますか。

Maho Shibui
1971年生まれ。作家
(株)家計の総合相談センター顧問
94年立教大学経済学部経済学科卒業。
大手銀行、証券会社等を経て2000年に独立。
人材育成コンサルタントとして活躍。
12年、処女小説『ザ・ロスチャイルド』で、
第4回城山三郎経済小説大賞を受賞。 

 

 

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