久しぶりに「日本の勝利」を実感
2020年の夏季オリンピックは東京に
2020年の夏季オリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決まった。競合のスペインとトルコに競り勝った結果だ。これによって、安倍首相をはじめとする多くの招致委員の努力が実を結んだ。
バブル崩壊以降、長期の経済低迷や昨今の領土問題など暗い話が多かったわが国にとって、久しぶりに「日本が勝った」と実感できる出来事と言えるかもしれない。
オリンピック開催は、競技場施設の建設やインフラの整備、さらには海外渡航者の増加など、わが国の経済にプラスになることが多い。経済専門家はオリンピックの経済効果を試算している。
経済効果の試算では、一定の条件を設定して、それに従ってGDPがどれほど拡大するかを机の上で計算する。設定する条件によって、はじき出される数字は大きく異なる。数字自体は余りあてにならないと思った方がよい。
それよりも最も重要なことは、オリンピック招致が、1990年代初頭以降、世界の政治・経済の分野で連戦連敗が続いてきた、わが国の流れを変えるきっかけになる可能性だ。国民の中に、「オリンピックを開催する」という明確な共通意識を醸成することができれば、少なくとも「何かの変化」が起きると期待が持てること、それが大切だ。
今回の招致活動は、かなり官邸主導の部分が多かったという。安倍首相が海外に出かける場合、必ず「この国のIOC委員は何人だ?」と尋ねたという。随行した外務省の職員が「IOCは文部科学省の管轄です」と答えると、怒ったという話まである。
また、自民党の政治家が海外に外遊する場合には、IOC委員のいる国を優先するようにとの指示が出たという。そこまで目的意識を持って活動を行った。それが、好評を博した“おもてなし”のプレゼンなどにつながった。明確な目的意識と成功体験が、今のわが国に必要なファクターであることは間違いない。