五輪祭りがやって来た。東京株式市場は五輪一色。スポーツ用品メーカーはもとより、競技場などの建設に携わるインフラ業界、開会式などの各種イベント関連、さらには訪日観光客増大に期待を寄せる旅行産業など、幅広いセクターが買われている。はたして東京五輪はアベノミクス「第4の矢」となれるのだろうか。

 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は、今後7年間の経済波及効果を約3兆円と試算している。年平均では4000億円強である。ただし、今回の東京五輪の「売り」はコンパクトで環境負荷が少ない点にあり、経済波及効果も控えめに見積もっている可能性が高い。

 しかし、そうだとしても日本の名目GDPは475兆円(2012年)。経済効果が年間4000億円強から1兆円に上振れしたとしても、さほど大きな数字ではない。日本経済や株式市場にとって重要なのは、こうした直接的な効果よりも間接的な効果ではないか。

 1カ月前にも当欄で指摘したように、東京五輪はアベノミクスと相性がよい。国土強靭化、外国人旅行者の受け入れ拡大、首都圏空港の機能強化とアクセス改善などは、五輪が来なくてもアベノミクスで推進するはずのメニューであった。

 アベノミクスで掲げられたメニューについては、筆者も高く評価している。しかし、そのメニューを本当に実現できるかどうか、まだ確信を持てずにいた。これは外国人投資家も同様だろう。よほど切羽詰まった状態に追い込まれるか、何かに強制されなければ、日本は「チェンジ」できないのではないかという疑念だ。

 そういう意味では、消費増税先送りの議論が高まったことが、外国人投資家を長過ぎる夏休みに追いやった要因だったと考えている。消費増税をしなければ、日本は財政破綻に近づき長期金利が急騰するという論理ではなく、消費増税しなければ、アベノミクスの成長戦略も推進されないという懸念である。