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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

社員の死は「会社のせい」と言い切れるのか?
検死医が明かす遺族と人事部の“覆い隠された苦悩”

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第18回】 2013年11月5日
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 会社員の突然死や自殺はなぜ起こるのか――。職場で起きる「原因不明の死」は、他人事ではない。それは、亡くなった本人の遺族はもちろん、残された上司や同僚の心にも、長年にわたって暗い影を落とし続ける。

 今回は、死因が特定できない会社員の突然死や自殺について、警察から依頼を受け、遺体を解剖し、死因を特定する医師を取材した。法医学を専攻する杏林大学の高木徹也准教授は、不審遺体の解剖数が非常に多いことで知られる。

 高木准教授が法医学・医療監修を行なったドラマや映画は、多数に及ぶ。2011年3月11日の東日本大震災直後には、警察庁からの依頼で宮城県や岩手県などの遺体安置所で検死を行った。著書『なぜ人は砂漠で溺死するのか?』 (メディアファクトリー新書)では、会社員の突然死や自殺などについて、遺体という観点から分析している。

 会社員が突然死や自殺などをした場合、その遺体の状況、遺族や会社の動きについては知られていないことが多い。関係者が「死」をタブー視し、積極的に情報公開が行われないから、原因不明の死が繰り返されると見ることもできるのかもしれない。今回は、タブーとなっている「会社員の死」を法医学者とのやりとりの中で浮き彫りにしていくことで、悶える職場の断面にスポットを当てたい。


突然不整脈に襲われ、帰らぬ人に
原因が特定できない会社員の「死」

杏林大学の高木徹也・准教授

筆者 最近は、会社員が自殺や病気で死亡し、死因を特定できないケースが増えているのでしょうか。

高木 ここ(杏林大学法医学教室)に運ばれてくる遺体を私が診る限りでは、そのような事実はない。今は、多くの会社が社員に健康診断を受けるように働きかけている。メンタル面でもケアが進んでいる。

 私が医師になった20年ほど前に比べれば、会社は社員の健康管理にかなり注意を払うようになっている。会社員としては、ある程度早いうちに病気などを見つけることができ得るのではないだろうか。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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