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運動が脳トレになる理由(わけ)
神経栄養因子が増加

井手ゆきえ [医学ライター],-週刊ダイヤモンド編集部-
【第174回】

 秋のランニングシーズンなので運動に関する話題を。

 有酸素運動が心身に好影響することは様々な研究で確認されている。脳への影響もそのひとつ。ただ、肝心要の「どんなメカニズムで脳の健康によいのか」が今ひとつ解明されていなかった。しかし、どうやらその一部が明らかになりつつある。米国がん研究指定がんセンターでもある「ダナ・ファーバーがん研究所」からの報告。

 研究者らは、マウスを使った一連の実験で有酸素運動中に、筋肉細胞から特定のホルモンが放出されることを確認。このホルモンはギリシャ神話の女神ヘーラー(最高神ゼウスの妻)の伝令を務める「イーリース」にちなみ「イリシン」と名づけられた。

 これまでの研究で血液中に放出されたイリシンは、中性脂肪をため込む「白色脂肪細胞」に働きかけて、脂肪を燃やしエネルギーを産生する「褐色脂肪細胞」と同じ性質を発揮させることが知られている。つまり、運動によって脂肪をため込む体質が“燃焼体質”へと変化するのだ。実際、肥満・糖尿病予備軍マウスについて、イリシンを分泌させるよう操作したところ、体重が減少し、血糖値の改善が確認されている。

 一方、脳の中ではイリシンが脳由来神経細胞因子(BDNF)を増加させることがわかってきた。BDNFは、いわゆる「神経栄養因子」で、神経細胞の分化・成長に関係するほか、シナプスを伸長させる働きがある。うつ病や統合失調症、アルツハイマー病など脳神経系の疾患ではBDNFの減少が確認されている。したがって、BDNFを増やすイリシンは運動が脳の健康に好作用するキーファクターだと考えられるわけだ。主任研究者は「イリシンをベースに神経変性疾患の発症予防や、認知機能の低下を治療する薬を開発したい」としている。

 ちなみに、ヒトの血中イリシン濃度を測定する手段はすでにある。ただ、研究用なので一般人には縁がない。運動の健康効果が数値で目に見えれば継続するモチベーションが違う。治療薬の開発もそうだが、手軽に血中イリシンを測るキットが欲しいところだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド

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井手ゆきえ [医学ライター]

医学ライター。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、なぜか医学、生命科学分野に魅せられ、ここを安住の地と定める。ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けにネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。生命体の秩序だった静謐さにくらべ人間は埒もないと嘆息しつつ、ひまさえあれば、医学雑誌と時代小説に読み耽っている。

 

週刊ダイヤモンド編集部


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