告白しますが、私はピラミッド型の組織で働くことや出世指向の強い人が大の苦手です。会社のために命を削り、家庭を犠牲にまでして働くなんて、まっぴらご免です。
上昇志向丸出しで、常に上へ、上へ、と登り続けてないと気が済まないようなタイプの人っていますよね。そういう人を見ると、正直、“どん引き”してしまいます。
こんなことを書くと、「なんだ、お前、やる気ないのか?」と言われそうですが、私に言わせると、なんでもかんでも「やる気」で片付けようとするその発想法こそ問題じゃないか、と思うのです。
働く上で、「やる気」って本当にそんなに重要なものでしょうか?
日本人の労働時間は
じつはアメリカ人やイタリア人より短い?
まずは、労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較2012』にある下記のグラフを見てください。
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よく諸外国から「働き過ぎだ」と批判される日本人ですが、各国の労働時間を比較すると、必ずしも日本人だけが飛び抜けて長時間働いている訳ではありません。グラフの推移を眺めると、1988年あたりから日本の一人当たり平均年間総実労働時間(就業者)は減少傾向にあり、直近の労働時間に関してはアメリカ人やイタリア人よりもむしろ短い、という結果が出ています。
「働く時間の長さ」が問題ではないとしたら、日本人の働き方のいったい何が特殊なのだと言うのでしょうか?
じつは、長時間労働には大きく分けて2つのタイプがあります。1つは「コミットメント型」、もう一方は「ワーカホリック型」。辞書を引くと、コミットメントは「積極的関与」などと訳されています。
仕事に対して自らが積極的かつ主体的にかかわり、使命や責任をまっとうしようとし、結果として長時間働いてしまうのがコミットメント型。対するワーカホリック型はどんな点に特徴があるかと言いますと、「不安」が働く原動力になっている。たとえば、こんな風に思った経験はありませんか?
自分は与えられた仕事がとてもこなせないのではないか、こんなことで周りに迷惑をかけてどうなるんだ、評価が下がって将来絶望になったらどうしよう、不安だがとにかく頑張らないと、とても周りの人より早く帰れる雰囲気じゃないし……。
その上、不安を払拭するためにがむしゃらに長時間働いてしまう。そんな傾向が見られたら、それはワーカホリック型のサインです。
日本人の働き方に関して非常に大きな問題点の1つは、諸外国と比べて労働時間が長いことではなく、このワーカホリック型が多いことだ、と言われています。
働くことにまつわるもろもろの不安を払拭するために依存的に長時間働き、その結果、心身の健康を崩してしまう。そのことが、世界的に見ても特殊なのです。