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ここがヘンだよ 日本人の働き方 高橋俊介

ここがヘンだよ日本人の働き方
成果が出ないのは「やる気」のせいじゃありません

高橋俊介 [慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授]
【第1回】 2013年12月4日
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 告白しますが、私はピラミッド型の組織で働くことや出世指向の強い人が大の苦手です。会社のために命を削り、家庭を犠牲にまでして働くなんて、まっぴらご免です。

 上昇志向丸出しで、常に上へ、上へ、と登り続けてないと気が済まないようなタイプの人っていますよね。そういう人を見ると、正直、“どん引き”してしまいます。

 こんなことを書くと、「なんだ、お前、やる気ないのか?」と言われそうですが、私に言わせると、なんでもかんでも「やる気」で片付けようとするその発想法こそ問題じゃないか、と思うのです。

 働く上で、「やる気」って本当にそんなに重要なものでしょうか?

日本人の労働時間は
じつはアメリカ人やイタリア人より短い?

 まずは、労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較2012』にある下記のグラフを見てください。

参照:労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較2012』「6.労働時間・労働時間制度」より引用
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 よく諸外国から「働き過ぎだ」と批判される日本人ですが、各国の労働時間を比較すると、必ずしも日本人だけが飛び抜けて長時間働いている訳ではありません。グラフの推移を眺めると、1988年あたりから日本の一人当たり平均年間総実労働時間(就業者)は減少傾向にあり、直近の労働時間に関してはアメリカ人やイタリア人よりもむしろ短い、という結果が出ています。

 「働く時間の長さ」が問題ではないとしたら、日本人の働き方のいったい何が特殊なのだと言うのでしょうか?

 じつは、長時間労働には大きく分けて2つのタイプがあります。1つは「コミットメント型」、もう一方は「ワーカホリック型」。辞書を引くと、コミットメントは「積極的関与」などと訳されています。

 仕事に対して自らが積極的かつ主体的にかかわり、使命や責任をまっとうしようとし、結果として長時間働いてしまうのがコミットメント型。対するワーカホリック型はどんな点に特徴があるかと言いますと、「不安」が働く原動力になっている。たとえば、こんな風に思った経験はありませんか?

 自分は与えられた仕事がとてもこなせないのではないか、こんなことで周りに迷惑をかけてどうなるんだ、評価が下がって将来絶望になったらどうしよう、不安だがとにかく頑張らないと、とても周りの人より早く帰れる雰囲気じゃないし……。

 その上、不安を払拭するためにがむしゃらに長時間働いてしまう。そんな傾向が見られたら、それはワーカホリック型のサインです。

 日本人の働き方に関して非常に大きな問題点の1つは、諸外国と比べて労働時間が長いことではなく、このワーカホリック型が多いことだ、と言われています。

 働くことにまつわるもろもろの不安を払拭するために依存的に長時間働き、その結果、心身の健康を崩してしまう。そのことが、世界的に見ても特殊なのです。

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高橋俊介(たかはし・しゅんすけ) [慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任教授]

1954年東京都生まれ。東京大学工学部航空工学科を卒業し日本国有鉄道に入社。84年プリンストン大学工学部修士課程を修了し、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京事務所に入社。89年ワイアットカンパニーの日本法人ワイアット(現タワーズワトソン)に入社。93年同社代表取締役社長に就任。同職を退任後、個人事務所ピープル ファクター コンサルティングを通じて、コンサルティング活動や講演活動、企業の人材育成支援などを行う。2000年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授に就任。同大学SFC研究所キャリア・リソース・ラボラトリー上席所員(訪問)を経て、11年11月より現職。

『組織マネジメントのプロフェッショナル』(ダイヤモンド社)、『人材マネジメント革命』(プレジデント社)、『21世紀のキャリア論』(いずれも東洋経済新報社)など著書多数。


ここがヘンだよ 日本人の働き方 高橋俊介

“がむしゃら”に会社のために働くことが正解だった高度経済成長期。その時代を脱し、低成長・グローバル化が進む今は、その働き方がふさわしいものではないと多くの人が認識し始めている。しかし、それでもなかなか日本企業、日本人の働き方は変わっていない。一体何か、日本人の働き方革命を阻害し、日本企業の成長を止めているのか。世界的にみて「ここがヘンだよ」と思われる日本人の働き方を明らかにすると同時に、新しい時代の働き方への処方箋を提示する。

「ここがヘンだよ 日本人の働き方 高橋俊介」

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