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安東泰志の真・金融立国論

あなたの企業年金は大丈夫?
巨額不明金・長野基金に見る「総無責任化」の実態

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第40回】 2013年12月9日
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長野県建設業厚生年金基金で事務長が、24億円もの巨額資金を着服した疑いで逮捕された。マスコミでは事務長の豪遊ぶりばかりが報道されているが、それが問題の本質ではない。なぜ「総合型」の厚生年金基金で次々と問題が発生するのか。本稿では、企業年金、特に総合型年金基金の運営上、加入者に対する善管注意義務や忠実義務がおざなりにされ、その利益が損なわれている現状を検証する。読者のみなさんも自ら加入する厚生年金基金の運営体制のチェックに役立てていただきたい。

だれも責任を負わない「総無責任化」

 11月14日、長野県建設業厚生年金基金(以下「長野基金」)で使途不明となっている約24億円を着服した疑いが強い、同基金の元事務長(56)がタイ市内で不法滞在の疑いで逮捕され、その後長野県警に逮捕された。週刊誌などでは同事務長の銀座や海外での豪遊ぶりが取り上げられて大きな関心を集めているが、それは本質的な問題ではない。

 同基金では、この使途不明金とは別に資産の大半を消失させたAIJ投資顧問に約65億円を委託していた。長野基金は約380社、6400人の加入員を擁する大きな基金であるが、AIJでの損失に加えて、今回の使途不明金の損失が確定すれば、加入企業にとっては大きな痛手となる。というのは、後ほど説明するように、長野基金は「総合型」基金であり、国から預かった厚生年金資金の代行部分を割り込んだ場合は、最終的には加入企業が連帯して穴埋めする義務を負うからだ。

 この事案を通して明らかになったのは、厚生年金基金、特に総合型年金基金運営の杜撰さと、誰も責任を負わない「総無責任化」の現状である。長野基金では、こうした現状に憂いを抱く加盟企業の1社が脱退を求めたが代議員会で認められず、長野地裁で争い、昨年の1審では脱退が認められたが、引き続き係争中である。このように、加盟企業は、無責任な厚年基金運営の被害者であるばかりか、被害の最小化の道筋さえ閉ざされているのだ。

 別の事件であるが、本年6月28日には、北海道石油業厚生年金基金理事長が、投資顧問会社からの収賄の疑いで逮捕されている。この基金も380社が加盟する総合型年金基金であり、同じくAIJ事件で損失を被った。その結果、加盟企業の負担において来春解散することになっている。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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