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日本と世界の重要論点2014

【論点4】賃金と雇用
2014年の賃金上昇を困難にする3つの懸念
――みずほ総合研究所副理事長 杉浦哲郎

杉浦哲郎[みずほ総合研究所副理事長]
【第4回】 2014年1月9日
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アベノミクスの成否を握る賃上げ

すぎうら・てつろう
みずほ総合研究所副理事長。1954年生まれ。早稲田大学卒。77年富士銀行(現みずほファイナンシャルグループ)入行。同行調査部、富士総合研究所研究開発部主任研究員、ニューヨーク事務所長、経済調査部長、みずほ総合研究所執行役員、チーフ・エコノミストを経て現職。 『アメリカ経済の光と影』『病名:【日本病】』『日本経済の進路2003年版』など著書多数。

 安倍政権が、賃上げに強い執念を見せている。昨年春に経営者に対して賃上げ実現を要請した後、政労使会議の立ち上げ、賃上げを促す企業減税の実現などを通じて、賃上げ実現に向けた環境づくりを進めてきた。

 安倍政権がそこまで賃上げにこだわるのは、いうまでもなくアベノミクスの成否が賃上げにかかっているからだ。アベノミクスのスタートとともに、景気は回復した。円安に伴い輸出企業の収益は回復し、株価も大きく上昇した。株高による資産効果で個人消費は回復し、景気対策(2012年度補正予算)による公共投資の拡大が景気を押し上げた。アベノミクス始動直後の景気刺激効果は、予想以上に大きかった。

 しかし、景気の回復力は減衰しつつある。2013年7ー9月期の実質GDP成長率は、前期比0.3%まで減速した。個人消費の寄与度は0.1%まで低下し、設備投資は停滞したままだ。円安にもかかわらず輸出は減少し、公共投資がほぼ独りで景気を支えている。実際、日銀短観の業況判断DIは改善しているが、その中心は景気対策関連業種・地域だ。雇用回復は非正規社員に限られており、一人当たり賃金も減少トレンドが続いている。

 政府・日銀が期待する景気回復の好循環、すなわち景気回復が、雇用・所得を増やし、個人消費を回復させ、設備投資を誘発して景気回復が持続する自律的回復は、少なくとも明確な形では実現していない。景気対策の効果も息切れしつつある。このままでは、消費増税後の景気は、腰折れはないにしても、弱々しいものにとどまる可能性がある。だからこそ、安倍政権は賃上げとそれによる家計マインドの改善、消費回復にこだわったのだ。

なぜ賃金は下がり続けたのか

 しかし、日本の賃金が過去15年以上にわたる下落トレンドに終止符を打ち、持続的上昇基調に転じるために乗り越えなければならないハードルは高い。

 まず、賃金を巡る事実を確認しておこう。厚生労働省「毎月勤労統計」によれば、一人当たり名目賃金は1997年をピークに下落を続け、2012年はピークよりも12.8%低い水準となっている。実質賃金でみても、2012年はピーク(1996年)を9.2%下回る【図表1:賃金指数の推移】。

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