しまむらの看板写真はイメージです Photo:PIXTA

「しまむら」のパート時給が2000円超え――。一部の大手チェーンでは、フルタイムで働けば「年収400万円」、近い将来には「年収500万円」も視野に入る「勝ち組非正規」が生まれつつあります。一方で、多くの企業で正社員の賃金が伸び悩んでいる現状も。なぜ、このような“逆転現象”が起きているのでしょうか。それは、単なる人手不足だけが原因ではありません。本記事では、若者人口の激減、「年収の壁」の制度変更といった構造的な要因を読み解きます。日本の雇用常識を根底からひっくり返す「エゲツない未来」の正体に迫ります。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)

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「時給2000円」が生死をわける…
中小零細に襲いかかる“エゲツない未来”

 流通コンサルタントの小島健輔さんの分析(WWD 7月3日)が話題です。ファッション業界のリーダー企業であるしまむらとユニクロの店舗で働く従業員の賃金が接近しているというのです。

 四季報の給与の比較ではユニクロを運営するファーストリテイリングの社員の平均年収は1179万円、しまむらは707万円です。多くの小売業態では従業員の年収はしまむらと同水準かそれ以下ですから、一見、ファーストリテイリングが突出して年収は高いように思えます。

 しかしファストリの1179万円はグローバルな持ち株会社の1601人の正社員の平均であって、国内ユニクロの約1万2000人の給与を表しているわけではありません。そこで小島さんが公開資料から独自に計算したところ、ユニクロとしまむらはどちらも店舗従業員の給与水準は大きく変わらないというのです。

 むしろ私が注目したのは、しまむらのパート従業員の年収です。しまむらは海外事業が小さいため公開資料からほぼ国内の事業構造が推定できます。小島さんはしまむらのパート従業員のフルタイム換算の年収が約434万円だと計算しています。