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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

貧困の代名詞・蘇北地方の都市・塩城は
いまや紀亜自動車の城下町に変身

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第189回】 2014年1月17日
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 揚子江の南は江南と呼ばれる。気候的にも恵まれ、古くから「魚米の里」としてその豊かさが知られている。とくに浙江平野とも呼ばれる杭嘉湖(こうかこ)平野一帯と江蘇省の蘇州あたりは「上有天堂、下有蘇杭(天上に極楽あり、地上に蘇州・杭州あり)」とたたえられてきた。

「江北」という表現が禁句なワケ

 中国には、江南の美しさと素晴らしさを褒めたたえる記載が調べきれないほどある。中国古代の詩や歌には、「江南好(江南が素晴らしい)」、「憶江南(江南に思いを寄せる)」、「夢江南(夢にも江南が出てくる)」などの表現がいっぱい出てくる。唐の有名な詩人白居易もこのような詩を書いている。

 私も自分の作品のなかで愛情をこめて江南を何度も書いている。たとえば、『「中国全省を読む」事典』には、その江南を次のように描いている。

 「網のように分布している川が目にしみるような緑の水田地帯を悠々と流れていく。川の両岸の春雨に煙る柳はそよ風に枝を揺らしながら、墨絵のような江南の美をあますところなく見せている。」

 白亜の壁に黒いかわらの農家が織りなす田園風景、大きな弧線を描くように川にまたがる石橋の円洞から、小舟が一艘(そう)また一艘と静かな水面を滑るようにやってきてはまた去っていく、犬の遠吠(とおぼ)えに鶏の鳴き声、そして小舟をこぐ音……、江南の春を民族色豊かなBGMつきの水墨画と描写する。

 しかし、揚子江の北というと、事情が複雑になる。特に江蘇省では、まず「江北」という表現が禁句である。差別的な響きがあるからだ。揚子江の北を表現したい場合は、「蘇北」という言葉を使う。その蘇北は揚州、泰州、南通、塩城、徐州、宿遷、連雲港などの地域を指す。上海を中心とした江南では、蘇北を貧困の代名詞のように見ている傾向が昔から見られる。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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