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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

奇跡のエースはなぜ「キモイ変人」へと貶められたか
若きディレクターの生気を奪う“嫉妬のいじめ包囲網”

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第27回】 2014年1月21日
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 今回は、40~50代のおじさんたちにいじめ抜かれる、30代前半のテレビディレクターを紹介したい。この男性は数年前、中途採用試験を経て、大手の番組制作会社に転職した。しかし、そこでは先輩であるディレクターにいじめ抜かれる。その背後には、様々な人間模様が見え隠れする。

 男性は、筆者のかつての「教え子」である。現在に至るまでに、30~40回はいじめについて相談を受けた。今回、彼と私が試みたのがいじめの構造を分析することだった。

 読者の中にも、似たような境遇で悶えている人がいるかもしれない。そんな人たちが、自分の身に置き換えて、このエピソードから何らかの教訓を得てくれれば幸いである。


「もう、辞めようかな……」
憧れの新天地で待ち構えていた現実

 「もう、辞めようかなと思う。だけど、何とか結果を出したいから、踏み止まっている。毎日、周りからバカにされる。自分がみじめになる」

 キー局の一角を占めるテレビ局系列の大手番組制作会社(正社員数300人)にディレクターとして勤務する、三笠寛(仮名・32歳)はためらいながら話す。

 筆者が2011年まで専門学校で教えていた際の、受講生の1人である。彼は、そこで文章の書き方を学んでいた。現在の大手番組制作会社には、1年半前に中途採用試験を経て入社した。倍率は、200倍ほどになるという。

 それより前は、赤坂にある社員が10人に満たない制作プロダクションに、AD(アシスタントディレクター)やディレクターとして8年間ほど勤務していた。規模は小さいが、放送業界で名が通った「ギャラクシー賞」などを獲得した会社である。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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