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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

日中韓、ナショナリズムのぶつけ合いは「必要悪」か

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第75回】 2014年2月5日
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 今年も企業説明会やセミナーなど就職活動(就活)が始まっているが、その進み方が例年より明らかに早いようだ。アベノミクスによる株高・円安の進行で、企業のマインドがポジティブになっているのだろう。「2014年3月末決算」は7割の企業が増収増益だという。新卒の採用に積極的になっているようだ。筆者はこれまで、アベノミクスを散々に批判してきた。しかし、そんな筆者でさえ、教え子のことを考えると、こんな風に思ってしまう。

 「3回生の就活が終わるまで、せめて今年の夏まで、アベノミクスが崩壊しないでくれ」

 アベノミクスに対する高支持とは、実はこんなもんじゃないだろうか。

 筆者が会社員だった時代、「3月末決算」が大変だったのを覚えている。毎年3月末になると、部署の数字上の目標を達成するために、いかに売上を計上し、利益を出すか必死だったものだ。4月以降の予定の売上をなんとか3月中に上げられないかとか、課長以下、課員全員大変な残業をしてやっていた。4月以降はどうするんだとか、そんなの関係ない。とにかく「この3月末をどう乗り切るか」それだけだった。

 昨年、アベノミクスへの支持が高まったのは、株高・円安で企業がとりあえず利益を上げられて、「3月末決算」を乗り切れたからだ。長年の不況に苦しむ企業経営者にとって、そして部長、課長、その部下の平社員にとっても、「とにかく利益が出るならなんでもいい」ということだったのだと思う。

 しかし、本当は経営者も現場もアベノミクスの本質はわかっているのだと思う。大胆な金融緩和(第一の矢)、公共事業(第二の矢)で株高・円安が進行しても、既に海外移転を完了した日本企業の輸出は増えない。エネルギー輸入コストも上昇して、経常赤字が続いている。期待されたほど、給料も上がらない。所詮、斜陽産業の衰退をとりあえず救済しただけに留まっている。成長戦略や産業構造改革で新たな成長産業が登場しなければ、日本経済の本当の復活はないのは明らかだ。

 それでも、結局「今さえよければいい」のだ。みんな、サラリーマンである。人事異動でいずれ部署は変わる。経営者でさえ「雇われ社長」が多い。いずれ交代するのだ。先のことなんて、考えたくないのである。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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