本来は個人住民税も給与から天引きに
意外と知られていない特別徴収の中身

 今年も確定申告の季節がやってきた。2月17日から全国一斉に所得税などの確定申告の受け付けが始まる。厄介な宿題を抱えているようで憂鬱だという人も多いのではないか。申告書の提出・納税の期限は3月17日で、確定申告の終了とともに春が到来する。

 2012年分の確定申告状況をみると、所得税の確定申告者数は約2152万人。このうち還付申告が6割近くを占め、納税申告は約609万人である。就業者数が約6244万人(2011年)なので、全体の1割にすぎない。給与所得者のほとんどが所得税を源泉徴収されているためだ。

 確定申告とは無縁の社会人生活を送り続ける人も少なくない。自分で申告作業する煩わしさや税をうっかり滞納してしまうこともない。その反面、納税意識が希薄になりがちというデメリットもある。

 ところで、給与所得者が毎月の給与から所得税を天引きされるのは、所得税法の規定に基づくものだ。給与支払者に対し、給与を支払う際に所得税を徴収し、国に納付することを義務づけている(従業員2人以下は例外)からだ。事業者に源泉徴収義務を課しているのである。

 所得税を源泉徴収しなければならない事業者は、原則として従業員の個人住民税(市町村民税と都道府県民税)分も給与から天引きし、従業員に代わって各自治体に納付しなければならない。地方税法に「市町村は、原則として所得税の源泉徴収義務がある事業者を個人住民税の特別徴収義務者として指定しなければならない」と規定されているからだ。

 こうした個人住民税の天引きを特別徴収という。つまり、給与所得者は毎月の給与から国税(所得税)と地方税(個人住民税)の双方を天引きされることになっている。

 ところが、こうした地方税法の規定とは異なる実態が全国的に広がっている。個人住民税の特別徴収は、所得税とは異なり従業員が住む市町村ごとに納付しなければならない。納付先が多数に及ぶことになり、事務はそれだけ煩雑となる。

 専任の経理担当者がいなかったり、従業員の出入りの多い中小零細の事業所にとっては対応しにくく、特別徴収は敬遠されがちだ。やりたくないという地元事業者に市町村側も強く出られず、そのまま特別徴収義務者の指定をせずにいるケースが少なくない。こうして従業員が自分で住民税を納める普通徴収を、事実上容認してきたのである。