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8人に1人が苦しんでいる!「うつ」にまつわる24の誤解 泉谷閑示

遊びには行けても、会社には行けない――これは本当に「ウツ」なのか?

――「うつ」にまつわる誤解 その(5)

泉谷閑示 [精神科医]
【第5回】

 出版社で課長職にあるTさんの部下E子さんは、「うつ病」で半年前から休職中です。

 E子さんの休職は「うつ病のため、自宅療養を要す」という医師の診断書が提出されての正式なものではあるのですが、上司であるTさんは内心、「E子さんは本当にうつ病なのだろうか?」と疑問を抱いています。

 E子さんは以前から、仕事がいよいよ忙しくなるという時期になると、決まって体調不良を理由に休み始めるパターンを繰り返していました。そのことは、グループ管理者としてのTさんの頭をずいぶん悩ましていたのでした。

 E子さんのこの傾向は年々ひどくなってきていて、当然、部課内の他のスタッフたちも、もうすっかりE子さんを当てにしないような雰囲気になってきていました。

 そして、皆がひそかに予想していた通り、E子さんは半年前についに本格的な病気休職に入ったのでした。

 「結局、彼女は大変な仕事はしたくないってことなんでしょ」

 「あれはきっと、最近よく言われてる『偽うつ』なんじゃない?」

 「まあ、仮病の一種だよな。だって、聞いた話じゃ自宅療養中なのに、旅行とか行ったりして、楽しく遊んでるらしいぜ」

 「えーっ本当? それって、絶対『うつ』じゃないわ! だって、私の叔母さんが前に『うつ』になったことがあるからよく知ってるけど、『うつ』の人って、全然動けなくなったりして、ちょっと外出するのさえ一苦労っていう感じになるものなのよ」

 部下たちのこんなやり取りも、Tさんの耳に入って来ています。

 Tさんには、「うつ病」とはいったい何なのか、段々わからなくなってきていました。折にふれて「うつ」に関する本やTVの「うつ」特集などは気にして見るようにしているのですが、「うつ」についての様々な情報は入ってくるものの、言っていることがそれぞれ微妙に食い違っていたり、そこで言われている「うつ」にはE子さんの状態が当てはまらないところもあったりして、どこか判然としないのです。

医師も戸惑うほど変わる
「うつ病」の定義

 このTさんのように、「うつ」に関して、わかるようでわからないという感想を持っている方も決して少なくないことだろうと思います。

 実際、現場で臨床をしている私自身も、特にこの10年ほどの間で、目まぐるしく「うつ」についての定義や情報が変化してきていることに、正直なところかなり戸惑いを覚えているほどです。ですから、一般の方たちにとってはなおのこと、わかりにくい状況だろうと思います。

 さて、このE子さんが果たして本当に「うつ」なのかどうかを考える前に、少々専門的ですが、いくつか説明しておかなければならないことがあります。

診断法が変わってきた
「お家事情」

 そもそも従来の日本の精神医学・医療は、ドイツ流の精神医学に倣った診断学を基礎にして、診断や治療を行っていました。そして「うつ病」と言えば、主に「内因性うつ病」というものを指していたのです。これは、今日では「典型的うつ病」「古典的なうつ病」と言われたりします。ここに躁状態も加わっている場合には、これを「躁うつ病」と呼びました。

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泉谷閑示 [精神科医]

1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部付属病院医員、(財)神経研究所付属晴和病院医員、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。著書に『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)と最新刊の『「私」を生きるための言葉』(研究社)がある。
「泉谷クリニック」ホームページ


8人に1人が苦しんでいる!「うつ」にまつわる24の誤解 泉谷閑示

いまや8人に1人がかかっているといわれる現代病「うつ」。これだけ蔓延しているにもかかわらず、この病気に対する誤解はまだまだ多い。多数の患者と向き合ってきた精神科医が、その誤解を1つずつひも解いていく。

「8人に1人が苦しんでいる!「うつ」にまつわる24の誤解 泉谷閑示」

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