第1章 ビットコインを理解しよう

ビットコインは「きわもの」ではない

「ビットコイン」に対する関心が、急速に高まっている。これは、インターネット上で使われている仮想通貨だ。

 日本のマスメディアは、これをどう評価するかについて態度を決めかねているが、概して言えば、ネガティブなスタンスだ。

 よくても「まったく斬新なものだが、今後の成り行きが注目される」とか、「規制・監視が必要」などという類の、腰の引けた扱いだ。悪ければ「きわもの」「詐欺」「犯罪の道具」「投機の手段」であるとされる。「したがって取り締まるべきだ」という結論になる。

 こうした評価の根底にあるのは、「責任ある主体が発行・管理しない通貨など、広まるはずはない」「どこかに技術的または経済的な欠陥があるに違いない。だから、ビットコインを所有したり使用したりしていれば、いつか大損害を被る」という考えだ。

 しかし、実は、深刻な攻撃を受けているのは、既存の社会制度なのである。ビットコインの意義をそうした視点から取り上げたものは、私の知るかぎりでは、日本のマスメディアにまだ登場していない。また、ビットコインの潜在的可能性に注目し、それが社会をいかに改革しうるかを論じたものもない。

 この連載では、「ビットコインが何をもたらすにしても、それは通貨史上の大きな革命であるばかりでなく、まったく新しい形の社会を形成する可能性を示した」との認識に立ち、ビットコインの仕組みを解説し、それがもたらしうるものについて論じることとする。

正確に理解することから出発しよう

 この数ヵ月間に、ビットコインに関するニュースが、いくつも立て続けに報道された。

 2013年12月5日、中国人民銀行は、金融機関に対し、ビットコインを使った金融サービスの禁止を通達し、通貨として流通させない考えを伝えた。これにより、ドルに対するビットコインの交換価値が急落した。

 2月10日、大手両替業者Mt.Gox(マウントゴックス)がハッカーの大規模なサイバー攻撃を受け、引き出し停止を余儀なくされた。

 2月13日、薬物販売サイト「シルクロード2.0」がハッキングされ、総額270万ドル(約2億7500万円)相当のビットコインが盗み出された。

 これらのニュースは、ネガティブなニュアンスで報道された。「ビットコインの弱点が浮き彫りにされた」と解説しているものもあった。

 これらのニュースは、本当にビットコインの弱点を暴露するものなのだろうか? そうではない。少し考えればわかるように、まったく逆なのである。