どんな暮らしがよいか
考えるプロセスが大事

「振り返ると日本人の住まい観は、畳にたんす、ちゃぶ台が中心だった半世紀前から驚くほど変わっており、しかも今なお変化し続けています。家づくりに取り組むときは、資産価値やデザイン性など考えることはたくさんありますが、私はベーシックな居住性を最も重視すべきだと思うし、『自分たちが何を求めているか』をしっかり見据える、そのプロセスこそが大事なのだと考えます」と坂根氏。

 新築マンションのトレンドに目を向けると、年々、スペースが拡大傾向にあるのが浴室だ。バスタイムを重視する人が増えた結果、設備も充実し、多様なタイプが選べるようになった。

 住まいに関するニーズが変化するのを追うように、住宅設備もリフォーム技術も日進月歩している。「家族が喜ぶ家」に向け、新製品やサービスに目を向けてみるのもよさそうだ。

生活スタイルに合わせた
改修や住み替え計画

 家族のライフスタイルは、刻々と変化する。そのため最近の住宅では、その時々に住まいを変えられる「可変性」が重視されるようになってきた。

「例えば数年前に長期優良住宅の仕組みができ、推奨されていますが、あれは『長持ちさせ、住み続ける』というより、『ライフスタイルに合わせ住み替えられる住宅をストックしていく』という意味が強いのです。高齢化が進む中で、幸せな住まいを求めるなら、適切な時期に住み替えやバリアフリー化を含むリフォームを計画していくことも重要になります」

 マンションリフォームでは、最近、内装や配管をすべて除去し、構造体まで戻して間取りを一新するフルリフォームが注目されている。大がかりなバリアフリー化も、こうしたフルリフォーム時にプランに盛り込めば、実現しやすい。

「難しいのが戸建てのバリアフリー化で、道路と敷地、玄関と上がりかまちなど、何ヵ所も段差があることも多い。街路や公共機関のバリアフリー化は進んでいるのに、自宅が車いす対応でないため、行動を制限される要介護者も少なくありません」

「人生90年時代」といわれる中で、多くの人が「自宅で最期を」と望み、介護する側も「自宅でケア」を望んでいる(図参照)。

 そのためには要介護状態になってからリフォームを考えるより、人生の転換期に、先を見越した改修を行うほうが望ましい。 「70~80代になると、住み替えやリフォームの意欲もうせがち。子どもが社会人になって家庭から巣立つ時期、親世代が50~60代のときが、そうした改修の好機になるでしょう」