パワハラ上司に、ゴマすり同僚、無気力部下…そんなアスホール(くそったれ社員=イヤな奴)は洋の東西を問わずどんな企業にもいるものだ。ただし、組織の宿命と思ってはいけない。グーグルなど勝ち組企業が、アスホール排除のルールを実践していることをご存知だろうか。スタンフォード大学の人気教授、サットン博士は、日本企業も同じ発想を持つべきと説く。(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)
ロバート・サットン スタンフォード大学工学部教授 |
どんな組織にもアスホール(くそったれ=イヤな奴)はいる。その振る舞いで、周囲の人間を落ちこませ、やる気をそぐような輩だ。
じつは、こうしたイヤな奴が企業に多大な損害を強いていることを読者諸賢はご存知だろうか。
ある試算によると、イヤな奴が1人存在することより当該企業が被る損害額は、人件費は別として、年間最大16万ドル(約1600万円)にも上る。1人いるだけでも周囲の生産性は落ち、同僚は辞め、特に管理職にいる場合は、深刻な訴訟問題に発展することもある。
イヤな奴の性格は波及性があるので、周りもイヤな人間になる。いい人のそばにいれば周りもいい人間になるが、イヤな人間の前では誰でもイヤな人間になるというのは、組織行動論でも実証されている傾向だ。
それだけではない。日中イヤな奴を相手にしていると、夜帰宅しても妻や子供ら家族との生活に悪影響を与えかねない。効率的に組織を運営するために、そして社会倫理的な観点においても、企業はこうしたイヤな奴の存在を許してはならないのだ。
イヤな奴には2つのタイプある。
一時的に感情的になってひどい振る舞いをするテンポラリーアスホール。そして筋金入りのサーティファイド(認定)アスホールだ。発露の仕方はさまざまで、悪質ないじめに始まり、相手の存在を無視したり、政治的な計略を用いて相手を背後から刺すこともある。
アメリカの場合は、イヤな奴がたくさんいる業界というのがあって、ハリウッドの映画界はその典型だ。誰もがイヤな上司に仕えてきた経験があって、晴れて昇進した暁には、自分も同じように振舞うのだ。スポーツ界のコーチの世界でも、そうしたアスホールの連鎖がある。
では、組織からイヤな奴をなくすためには、どうすればいいのか。じつは、この点で、大いに参考になるのがグーグルである。