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バックネット広告でも差がついた、
日米プロ野球の経営構造

相沢光一 [スポーツライター]
【第78回】 2009年11月10日
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大リーグ球場に日本語広告が載る
ヴァーチャル広告の威力

 ご存じの方も多いだろうが、MLBの広告はヴァーチャル広告である。実際の球場バックネットに広告は存在せず、緑色の枠が取られているだけ。このスペースにコンピュータグラフィック合成の映像処理で広告をはめ込み、放送しているのだ。選手がその前を横切っても映像がダブることはない。あたかも、その場所に広告が存在しているように見える技術だ。

 ワールドシリーズの中継ではこの部分に日本企業の広告が次から次へと表示された。キリンビバレッジの缶コーヒーブランド「Fire」(松井がCMキャラクターになっている)、予備校の「東進ハイスクール」、スポーツブランドの「ミズノ」などだ。ミズノは製品を世界展開しているからまだしも、なんで日本の飲料メーカーや予備校がアメリカで広告を出しているのだろうと、松井の打席を見ながら思った人がいるかもしれない。が、これは日本向けの中継映像にのみ載っている広告。現地の人が見ることはないのだ。

 ヴァーチャル広告にはさまざまなメリットがある。MLBは多国籍集団だ。アメリカ出身者だけでなく、中米諸国、カナダ、日本、韓国、少数ではあるがオーストラリアやヨーロッパからも選手が入っている。そうした国々が放送する場合、その国の広告を映像に載せることができる。ひとつの放送で何重もの広告料金が得られるのだ。

 このヴァーチャル広告の料金はチームの人気によっても異なるが、注目度が高いヤンキースの場合、1/2イニングで30万ドル(約3000万円)といわれる。回の表か裏、アウト3つ分の時間でこの値段だ。

 高いと思われるかもしれないが、そうでもない。テレビCMは30秒で1000~5000万円するといわれる(時間帯や視聴率で異なる)。イニング単位なら、3者凡退であっさり終わったとしても5分程度、投手が四球を連発したり打線が爆発すれば30分近くイニングが続くこともある。その間、自社の広告が延々と映像に載るわけで、広告効果、ブランド訴求効果は抜群。それを考えれば企業にとって割高感はない。だから今は広告代理店にもMLBのヴァーチャル広告の申し込みが多く、枠がなかなか空かない状態ともいわれる。

NHKの電波に堂々と広告を載せ
ちゃっかり収益を得るMLB

 日本の場合、CS放送以外ではMLB中継のほとんどをNHK(BS)が行っていることもポイントだ。NHKは国民からの受信料で運営されており、なおかつ公共放送であるがゆえ特定の企業に寄った放送をしてはいけないという方針も持つ。番組の中で具体的な企業名やブランド名を語ることも禁じられているほどだ。

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相沢光一 [スポーツライター]

1956年埼玉県生まれ。野球、サッカーはもとより、マスコミに取り上げられる機会が少ないスポーツも地道に取材。そのためオリンピックイヤーは忙しくなる。著書にはアメリカンフットボールのチーム作りを描いた『勝利者』などがある。高校スポーツの競技別・県別ランキングをデータベース化したホームページも運営。 「高校スポーツウルトラランキング」


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