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伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

電力システム改革における
「アンバンドリング」の重要性

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第51回】 2014年3月17日
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宅配便が生産者に
チャンスを与えた

 現政権の電力システム改革で一番の話題になったのが、発電と送電網の切り離しをするという発送電分離である。来年の通常国会で発送電分離を盛り込んだ法案が審議されることになっており、そのときにはまたいろいろな論議が盛り上がるのかもしれない。そうした審議とは別に、大規模な改革を進行中の東京電力は、自主的に発送電分離を進めていくことを表明している。

 海外の電力システム改革においても、発送電分離は重要な柱になってきた。英語では発送電分離のことをアンバンドリング(unbundling)と言う。束(バンドル)をばらすというような意味である。今回はこの意味について考えてみたい。

 アンバンドリングの本質を簡単な例で説明してみたい。宅配便の果たしている役割である。

 少し前、東北地方にある有名なコメの生産者と話したときのことだ。この生産者は独自のブランドを打ち立て、おいしくてこだわりのあるコメを積極的に展開していることで知られていた。私はこの生産者に、生産したコメをどのようなルートで販売しているのかと質問した。

 返ってきた答えは、「半分ぐらいはオイシックスを通じて売っている」というものだった。オイシックス(Oisix)はインターネットを通じた食料の販売で急速に伸びている企業だ。我が家でも利用しているが、生産者などを選んで注文をすると、毎週宅配便で商品が送られてくる。私が話をしたコメの業者などは、その高い品質とこだわりの生産方法により、オイシックスの客に人気があるのだろう。

 さて、もし宅配便という物流ルートがここまで整備されていなかったら、このコメの生産業者やオイシックスはどのように商品を販売していただろうか。その場合、オイシックスはおそらくビジネスを確立することはできなかっただろう。そして東北のコメ生産業者は、従来の農協ルートを利用して販売するしかなかったと思われる。末端の消費者には、こだわり製法のコメというビジョンは伝わりにくく、他のコメと同じような扱いを受けてしまったかもしれない。

 宅配便という物流のインフラが整備され、誰もがそのインフラを同じ条件で、低コストで利用できることが、生産者と消費者を結びつけた。そして生産者に、新たなビジネスに積極的にチャレンジする機会を提供することになった。

 全国のさまざまな生産者が、宅配便を利用して消費者にアプローチしていることは、読者の皆さんもいろいろな例をご存知だと思う。楽天などを利用して商品を取り寄せている人も多いだろう。コメの話に戻れば、宅配便の普及が生産・流通・販売の垂直統合的な仕組みをばらし(アンバンドル)、生産者や消費者に、より広い選択肢を提供するようになったのだ。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

「アベノミクス」によって大きく動き始めた日本経済。いまだ期待が先行するなか、真に実体経済を回復するためになすべき「創造」と「破壊」とは? 安倍政権の経済財政諮問会議議員を務める著者が、日本経済の進むべき道を明快に説く! 

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