勝田:われわれが「データジャーナリズム」と呼んでいるものは、実は社会学者らがこれまでやって来たことでもあります。

西内:けれども研究者とジャーナリストが同じことを別々にやっていくのはもったいないと思います。研究者が実証したことを、ちゃんと市民の声とか、読者の声に合う形でマッチングさせる仕事が「データジャーナリズム」ではないかと思います。

勝田:今までのジャーナリズムは「人脈」重視でしたが、今度は「データ脈」とでもいいますか、そんなものを見極める力が問われるのではないかと思うのです。データは一般に公開されていますから、ライバルは他の新聞社ではなくてメディア以外も競争相手になる。そこがチャレンジですね。

西内:新聞社には多くの記者が所属し、おそらく相当量のデータが蓄積されていると思いますが、記者は自分の取材が記事になった瞬間にそのデータのことを忘れてしまう、記事には使わなかったけれども、密かにパソコンに残っている情報が意外と重要でおもしろかったりするのではないでしょうか。

 例えば、企業のマーケッターたちは、なぜ消費者がモノを買うのか、わざわざお金をかけてインタビューしています。けれども新聞社は、当たり前のように日本全国や世界で、毎日誰かにインタビューしているわけです。その中で複数の視点からインタビューしている記事は、定性的であるがゆえに貴重なデータなのです。おそらく新聞記者は、意識せずにそうした情報を収集しているのではありませんか?

勝田:「データジャーナリズム」は、伝統的な取材手法との両輪で進化してこそ、新聞社の存在価値が高まるのでしょうね。

■photo by Kuniko.Hirano,Kazuhide.Endoh
 
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