グーグル会長・エリック・シュミット氏初の著書として全米ベストセラーとなった書籍『第五の権力―Googleには見えている未来』
今日から5回にわたって、その序章を公開する。
2025年、世界人口80億人のほとんどが、オンラインでつながる「デジタル新時代」において、私たちの暮らし、仕事、社会、政治、国家はどのように変わっていくのか。さっそく見ていこう。

自由な表現と自由な情報の流れを可能にする
新しい力・インターネット

インターネットは、人間がその手でつくっておきながら、まだ十分に理解することができていない、数少ないものの1つである。

もともとインターネットは、部屋いっぱいの大型コンピュータの間でデジタル情報をやりとりする手段として開発されたのだが、いまや生活のあたりまえの一部になり、人間の活力のはけ口と表現の場として、数え切れないほど多くの面をもつようになっている。

インターネットの世界はつかみどころがなく、絶えず変異をくり返し、ますます巨大で複雑になっている。そして、とてつもない善を生み出すとともに、おぞましい悪をもはらんでいる。

インターネットが世界に与えるインパクトは、ようやく目に見えるようになってきたばかりだ。

インターネットは、無政府状態で何が起こるかを知るための、史上最大の実験場である。

現実世界の法律に縛られないオンラインの世界で、今も何十億という人が、毎分毎分膨大なデジタルコンテンツを生み出し、消費している。インターネットを通して、人々は自由に表現を行い、自由に情報をやりとりする新しい力を手に入れ、その力を使って今日の多面的なオンラインの世界を生み出した。