MICE開催では
市をあげて「おもてなし」

 MICEについては、横浜には大きな優位性がある。羽田空港からのアクセスがよく、展示場・会議場と宿泊施設の距離が近く、みなとみらいや中華街などアフターコンベンションの会場にも事欠かない。特に主要なMICE施設であるパシフィコ横浜は、会議センターや展示ホール、ホテルが一体となっており、オールインワンの利便性の高い施設として知られている。日本政府観光局が発表した会場別国際会議の開催状況によれば、参加者数で10年以上連続1位を獲得している。

 また同施設には、年間約2800件のMICE開催の問い合わせがあるというが、その中で実際に対応できるのは800件ほど。現在、増える要望に応えるため、パシフィコ横浜の隣接地2・2ヘクタールの敷地に多目的ホールや会議場などの拡充施設を予定、完成すると現在の約1・5倍の規模になるという。

パシフィコ横浜で行われた「第5回アフリカ開発会議」(2013年)写真提供:外務省

「横浜市では、APEC首脳会議(10年)やアフリカ開発会議(08・13年)など大型国際コンベンションを成功させてきました。世界的に知られている国際会議がせっかく横浜で開かれているのですから、会議場の中だけでの出来事にしたくはない、市民の皆さまにも国際会議の開催を身近に感じていただき、横浜の『まちをあげたおもてなし』をしたいと考えたのです」と林市長は語る。

 そうした発想がアフリカ開発会議の「1校1国運動」に結びつき、多文化理解や国際交流の促進を目的として市立小中学校69校で行われた。また、「国際幹細胞学会 第10回年次大会」では山中伸弥教授と市内高校生の交流会が行われ反響を呼んだ。横浜市のMICEは、主催者と参加者と市民を結ぶための市をあげた「おもてなし」であり、経済効果のみならず、市民との交流を通じた社会的効果を持つ点にも特徴がある。

都市の魅力を一層高め
文化交流のハブとなる

「MICEを契機とした次世代育成」(山中教授と市内高校生の交流会、2012年)

 横浜市への観光客数は震災の影響などがあった11年と比較し、翌12年には11・3%アップの約2500万人となっている。市内ホテルの稼働率も85%と直近5年間の最高値を記録、文化観光局創設の効果ともいえよう。

 今年5月には「世界トライアスロンシリーズ横浜大会」の開催が第5回を迎えるなど、にぎわい創出の取り組みはスポーツの分野にも広がっている。

「文化芸術そしてスポーツには、都市の活力を生み出す力があります。今後も、都市の魅力を一層高め、東アジア諸国との文化交流ハブとして、連携を一層強く推進していきたい」と抱負を語る林市長。国際舞台での日本の発信力が問われる中、独自の文化と活力を持ち“千客万来”を目指す横浜市ならではの成長戦略に期待したい。