第2回では、CHORDxxCODEの技術開発における、4つのメソッドを紹介した。今回は、その4つのメソッドを使って、これまでCHORDxxCODEが行ってきた、主な活動を紹介する。(文/CHORDxxCODE 久保友香)

 前回お伝えしたように、CHORDxxCODEのプロセスの一つの特徴は、おしゃべりを発端に技術開発を行うことである。「今、多くの人が何を求めているか」といった社会的問題意識ではなく、「私は今、これが欲しい」と、おしゃべりをし合って共有する自分たちの問題意識を発端に、技術開発を行う。

 私たちがバックグラウンドとする工学は、空間も時間も超えた「普遍的」な人々に、「画一的」に利益を与える技術であり、それをいつどこでも同じように作れる「再現性」を目指している。しかし、CHORDxxCODEでは、従来の工学では対象としてこなかった、自分だけが欲しい「個人的」な技術、今、一瞬求められる「流行」のための技術、すぐ消えて無くなってしまう「儚い(はかない)」技術まで、対象にしていこうと、最初から話し合った。

 今では人々は、テレビや新聞や雑誌から皆で同じ情報を得るのではなく、インターネットでそれぞれ別々の情報を得ている。人々の要求は多様化し、画一的な技術を供給して、人々から大きな満足を得ることは、不可能に近いと考える。それよりも、私たちが本当に欲しい技術を提供すれば、少なくとも一部の人々からは強く支持される可能性があると考えた。

 今回は、CHORDxxCODEが具体的におしゃべりを発端に、どのように「自分たちの欲しい」技術を開発していったか、2つの事例を紹介する。一つ目は、完全に、自分たちの問題意識のみから開発した「フルーツプロッタ」の事例、もう一つは、企業と問題意識を共有しながら、「自分たちの欲しい」技術を開発した「美努力支援メディア」の事例である。

食べられるディスプレイ「フルーツプロッタ」とは

「フルーツプロッタ」はCHORDxxCODEが最初に作ったプロダクトである。それが、おしゃべりを発端にしてどのように作られたかを紹介する前に、まずは、それがどんなものなのかを説明しよう。