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山田厚史の「世界かわら版」

さらば平和主義、日本の漂流が始まる
日米同盟と戦後レジーム脱却の衝突

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第61回】 2014年5月22日
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 同盟国の軍隊が攻撃されたら、自衛隊が応援に出る。実際のところ、「集団的自衛権」の行使とは世界に展開する米軍に日本が協力することであり、安倍晋三首相にとって憲法改正への突破口でもある。

 「戦後レジームからの脱却」を目指す首相は、占領軍に押し付けられた戦後秩序の象徴が憲法であり、日本人が誇りを取り戻すためにも憲法改正は必要というのである。戦争責任を負わされた戦後体制を否定し、日本人の歴史認識を改める。それが安倍首相の熱い思いだ。

 米国は歓迎するだろうか。「強いニッポン」は近隣諸国と緊張を高め、同盟国である米国にも警戒される。同盟強化を謳う集団的自衛権は同盟離反という逆向きの力を内包している。半世紀余り掲げてきた国際平和主義を捨てた後、日本はどこに向かうのか。

心に残る品川さんの言葉

 「安保法制懇」と呼ばれる安倍首相の私的な諮問機関が5月15日、自衛隊が海外でも戦闘に参加できるようにすることを提言。これを受けて首相は記者会見し、集団的自衛権を容認する憲法解釈に変えたいと表明した。

 その様子は官邸のホームページに動画で掲載されている。記者会見というより政治ショー。子供を抱く母親の大きな写真の前で、「お父さんやお母さんやおじいさんやおばあさん、子供たちの命を守れない」と首相はまくしたてた。

 「今の憲法では国外で戦闘に参加できないから国民の命を守れない」

 というのである。代償に誰の命をどれだけ犠牲にするのか、ということには触れない。

 言葉の軽さに面くらいながら画面の記者会見を見ながら昨年89歳で亡くなった財界人・品川正治さん(元日本火災海上保険会長、経済同友会終身幹事)の言葉を思い出した。

 「日本国憲法の旗はボロボロになったが、国民は旗竿だけはしっかり握っている。ボロボロでも旗は高く掲げ、なお進むしかない」

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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