日本はデジタルマーケティングの分野で大きく欧米諸国に差をつけられている、これが、この連載の主旨でした。その理由は、日本が、国としても企業としても、デジタルマーケティングどころか、その基礎となるマーケティング自体にあまり力を入れてこなかったからです。しかし、前回までの記事でお話したとおり、今後の取り組み次第で改善の余地が大いにあると考えれば、私たちの未来は明るいものになりますね。

 実はさらにもう1つ、改善によって私たちの未来を明るくするもの、つまり、日本が今は欧米諸国に大きく水をあけられているものがあります。それが日本人1人当たりの「生産性」です。

OECD加盟国34ヵ国で第21位
日本人は「1人当たりの生産性」が低すぎる

 現在、日本の成長を考える上で最も大きな問題となっているのは、少子化による人口減少です。これはすなわち、労働力の供給という意味で、生産年齢人口の減少につながるため、私たちは、あらゆる手段を使って、例えば、今家庭に入っている女性を労働市場に投入する、移民を受け入れる、などの対策を打つ必要があります。さらにもう1つ、労働市場の縮小対策として考えられるのが、1人当たりの生産性向上、すなわち就業者1人が提供できる価値を増やすことです。

 日本は1人当たりの生産性がとても低い国であることをご存知でしょうか。先進34ヵ国で構成されるOECD(経済協力開発機構)加盟国の2012年の労働生産性を見ると、日本の労働生産性は7万1619ドルで、OECD加盟国34ヵ国中第21位。GDPで米国、中国に次ぐ日本がこの順位というのは普通であれば考えられないことです。また、就業1時間当たりで見た日本の労働生産性は40.1ドル(4250円)と、OECD加盟34ヵ国中で第20位となっています。さらに、主要先進7ヵ国では1994年から19年連続で最下位です(「日本の生産性の動向2013年版」参照)。

 この現状を払拭すべく、様々な努力により生産性を伸ばすことができれば、人口が減ったとしても、各企業の利益率は上がり、GDPアップも可能になるはずです。ところがよくよく見ていくと、生産性は業態によって異なりますし、同じ企業の中でも工場とバックオフィスでも大きく異なるため、一筋縄ではいきません。

 トヨタ自動車のカンバン方式、カイゼンに代表されるように、日本の工場はいかに生産性を上げるかを日々追求してきました。ですから、製造業の生産現場における生産性は非常に高いわけですが、サービス業や、同じ製造業の企業でもホワイトカラーと呼ばれる営業や間接部門では生産性が低いのが現状です。

 確かに、工場の生産現場は生産性向上のために日々カイゼンしている一方、オフィスにいる私たちは残業が多く、ほとんどの企業が社員の生産性の向上にこれまで着目してきませんでした。このまだ手つかずのホワイトカラーの労働生産性の向上に1社1社取り組みはじめ、それぞれが社員1人の時間あたりの生産性を上げることができれば、日本企業は大きく変わるのではないでしょうか。