知識労働の生産性向上は業種・職種にかかわらず<br />至って簡単なはずであるダイヤモンド社刊 1890円(税込)

「知識労働の仕事は、充実するどころか不毛化している」(『プロフェッショナルの条件』)

 肉体労働の担い手としては、途上国に膨大な数の人たちがいる。先進国が今日の生活水準を維持するには、知識労働の生産性を上げるしかない。ところが、その知識労働の生産性が世界中で頭打ちである。

 ドラッカーは、今日の学校の先生の生産性が、100年前の先生の生産性を超えているとはとても思えないという。

 知識労働の内容は、無数といってよいほど多岐にわたる。肉体労働の比ではない。知識を要する仕事はすべて知識労働である。しかし幸い、ドラッカーによれば、知識労働の生産性を上げる方法は、業種・職種にかかわらず、ほぼ共通し、かつ至って簡単だという。

 しかも、高度のスキルや仕掛けが必要なわけではない。単に、まだ真剣に取り組んでいないだけである。

 知識労働の生産性を上げるには、第一に、仕事の目的を明らかにすることである。何のための仕事か。目的を達成する方法は、いくらでも工夫の余地があるはずである。トヨタ生産方式の大野耐一さんは、今のやり方が最悪だと思えと言っていた。

 第二に、本来の仕事に集中させることである。看護師さんは看護師としての本来の仕事を、他の仕事によって邪魔されてはならない。書類の処理は、それを専門とする事務職の方がたにさばいてもらわなければならない。

 第三に、働く人たち自身に、生産性向上の主役になってもらうことである。働く人たち自身の仕事についての知識が、生産性、品質、成果を向上させる原点である。

 第四に、継続学習を当然のこととすることである。継続学習なき知識労働は、知識労働たりうることさえできない。

 そして第五に、互いに教え合わせることである。教えることほど勉強になることはない。なぜなら、そもそもの目的からスタートせざるをえないからである。

「生産性の向上は、より賢く働くことでしか達成できない。ところが経済学者や技術者は、生産性向上の鍵として、より賢く働くことに主役の座を与えようとしない。経済学者は、資本を主役とし、技術者は技術を主役とする」(『プロフェッショナルの条件』)